「マーケット・ニュートラル」からの資金流出はグロース株に優位に作用する公算

年末に向けて、ヘッジファンドにリデンプション(償還)が生じやすい状況になります。ヘッジファンドへの解約通知に関しては、日本では四半期末の45日前までに通知が必要な「45日ルール」が知られています。ただし、このルールを厳格に遵守するヘッジファンドはほんのわずかで、実際には解約通知期間を「45日以内」に設定するヘッジファンドが多数派です。解約通知が増え始めるタイミングとして、四半期末の45日前を意識しておくことは一定の意義があるでしょう。

今年のヘッジファンドのパフォーマンスを考慮すると、当面は「(買い持ちと売り持ちを同額にする)マーケット・ニュートラル」から資金流出が生じる可能性があります。年初来のリターンは+2.4%とそれほど悪くはありませんが、ベンチマークである米国の3ヶ月金利との相対パフォーマンスは-3.2%と低調です。直近で同程度の低迷が見られた2018年には、3%以上の資金流出が発生しました。2000年以降の傾向に従えば、2023年の第4四半期(Q4)には運用資産残高全体から約5%の資金流出が予測されます。

マーケット・ニュートラルからの資金流出時には、「(株価の変動要因を統計的に調べる)ファクター分析」の動向に歪みが生じる可能性があります。Q4で資金流出が生じた場合、日米株式市場で「モメンタム(相場の勢い)」ファクターが調整しやすい傾向があることが確認されています。特に日本株市場では、モメンタムファクターはバリュー(割安)株への傾斜が顕著であり、モメンタムファクターが調整すればバリューファクターも調整を余儀なくされるでしょう。そのため、当面はグロース株が優位になる可能性が高いとみます。

また、「リスクフリーレート(国債など低リスクの金融商品の利回り)」に対するパフォーマンスが低調な「(経済情勢に基づいて売買する)マクロ系ヘッジファンド」も、資金流出のリスクが高いと考えられます。ただし、日米株式市場では現在、ポジション(持ち高)は中立的な水準にまで引き下げられているため、リデンプションに対応する場合でもその影響は限定的でしょう。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – 「45日ルール」はグロース優位に作用か(2023年11月6日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)画像はイメージ。

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