(注)画像はイメージです。

海外市場の振り返り

19日の米国株式市場で主要3指数はそろって上昇しました。先週末の引け後に米大手格付け会社が米国の信用格付け(無登録格付け)を引き下げたことで財政悪化への不安が広がり、米国10年国債利回りは一時4.56%台と、約1ヶ月ぶりの水準へと上昇しました。NYダウは序盤は売りが優勢となり、下げ幅は一時310ドルを超える場面もみられました。しかし、その後は金利上昇の動きが一服したことに伴い、午後にかけて持ち直し、3営業日続伸して取引を終了しています。一方、米ドル離れへの警戒感は根強く、為替市場では米ドルが主要通貨に対して下落し、ドル円は1米ドル=145円を割り込んでいます。

相場の注目点

米中の関税引き下げを受けてトランプ関税に対する警戒感がやや後退し、NYダウは2024年12月4日につけた史上最高値まであと5%と、持ち直しの動きが続いています。一方、先日の米国格下げなどから、市場の関心は通商政策に加えて米国の財政政策へと広がっており、トランプ大統領が掲げる減税策の行方が注目されています。

米下院指導部は5月12日に、減税策を盛り込んだ法案の概要を公表し、18日の採決で同案を可決しました。今後は本会議での採決に進むことになりますが、下院議長は翌週26日のメモリアルデー前後での可決を目標とする考えを示しています。法案には所得減税の恒久化や国防支出の拡大、国境・移民取り締まりのための予算増額などが盛り込まれており、責任ある連邦予算委員会(CRFB)は同案が2025~2034年度の10年間で政府債務を3.3兆~5.2兆ドル(約480兆~750兆円)悪化させるとの試算を公表しています。足元で米長期金利の上昇は一服し、市場は米国の格下げを冷静に消化したように見受けられます。しかし、減税法案の審議が本格化するなか、財政悪化懸念が金利上昇圧力に拍車をかける可能性には引き続き注意が必要です。

(野村證券 投資情報部 引網 喬子)

(注)データは日本時間2025年5月20日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。

ご投資にあたっての注意点