パウエル議長はインフレ動向次第で追加利上げの可能性があるとの姿勢を堅持

FRB(米連邦準備理事会)は10月31日~11月1日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、大方の事前予想通り政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を5.25-5.50%に据え置くことを決定しました。FRBが2会合連続で利上げを見送るのは、2022年3月会合で利上げを開始して以降初めてです。ただし、声明文では「インフレ率を時間とともに2%に戻すために適切となり得る追加的な政策引き締めの程度を決定する上で」との表現を据え置くなど、追加利上げの可能性を残しました。

パウエルFRB議長は会合後の記者会見で長期金利の上昇やドル高・株安による利上げ代替効果を一部認めたものの、インフレ動向次第で追加利上げの可能性があるとの姿勢を堅持し、今後の政策判断は経済データ次第との姿勢を重ねて強調しました。

今回の決定を受けて米国債市場では長期国債を中心にイールドカーブ全域に渡って金利が大幅に低下し、一時5.0%を上回っていた10年国債利回りは4.73%に低下、金利低下を好感して米国株式市場では主要3指数が揃って上昇しました。ドル円レートは神田財務官の円安けん制発言もあり、150円台と昨日と比べてやや円高ドル安水準で推移しています。市場の政策金利見通しの代理変数として先物金利を見ると、年内は金利据え置き、2024年6月前後からの利下げ開始との見方が織り込まれています。

FRBが23年9月会合で示した政策金利見通し(中央値)では、1回当たりの政策金利の変更幅を0.25%ポイントとした場合、2024年中は2回の利下げ見通しが示されました。ただし、これは23年中に1回の利上げを前提とした場合であり、市場コンセンサス通り、政策金利は現行水準で据え置きとなった場合は24年の利下げは1回となる可能性があります。利下げ開始後、FRBが一定のペースでの政策変更を意図した場合、2回利下げの場合は早くて24年9月利下げ開始の可能性もありますが、1回ならば24年末近くまで後ずれする可能性もあります。早期利下げ開始への自信が持てない中では、米国株式市場では、当面の間、長期金利の低下基調が定着し得るかが焦点となりそうです。

(野村證券投資情報部 尾畑 秀一)

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