直近1ヶ月あまりの米長期金利(10年国債利回り)はボラティリティ(変動性)が高い状態となっています。9月19~20日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)で示されたドッツ(メンバーの政策金利見通し)は、2023年末5.625%、24年末5.125%、25年末3.875%、26年末2.875%とされました(前回6月同:5.625%、4.625%、3.375%、未発表)。特に24年末は前回比0.5%ポイントの大幅な上方修正となりました。24年中に0.5%ポイントしか利下げしないとの見立てであり、景気やインフレの減速基調が明確化するまで高水準の政策金利を長期間維持するとの方針が明確化したと言えます。

その後、10月3日にはマッカーシー下院議長が解任されるという前代未聞の事態が生じ、今後の予算審議に大きな不安材料となりました。米国政府の資金繰りに支障を来し、デフォルトリスクの高まりをもたらしたと言えるでしょう。こうした流れの中で、米長期金利は10月23日に5.018%へ上昇し、2007年以来の高水準となりました。

10月31日~11月1日に開催されたFOMC後の記者会見において、パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は「慎重に進んでいる。長期金利が上昇したことなどにより、金融環境が大幅に引き締まった」と言及したため、追加利上げに喫緊性が無い様子が窺えました。米長期金利は低下へ転じ、足元で4.5%台となっています(11月7日現在)。

なお、米財務省は前回8月に実施したリファンディング(国債の四半期定例入札)から、財政赤字の想定以上の拡大、政府債務に占めるT-bill(米財務省短期証券で償還期限が1年以内の割引債)の比率が上昇したことなどから、利付債を増発したことも金利上昇の背景にありました。しかし、11月1日に実施したリファンディングでは、10年債と30年債において発行額の増加幅が小幅となったことから、需給面での長期金利上昇圧力は緩和しました(なお、20年債は発行額据え置き、2年債~7年債の増加幅は前回と同様)。

引き続きインフレ再燃の可能性も否定できず、前述の通り財政ファンディングを巡る不透明感もある中で、長期金利が5%を超えて水準訂正する想定も考えられますが、あくまでもリスクシナリオと考えます。  

さて、FRBは利上げ打ち止め後も政策金利を暫く現行の水準で据え置く姿勢です。これは実質政策金利(政策金利-インフレ率)を高水準に維持することを意味します。実質均衡政策金利を潜在成長率並みの1.5~2.0%程度、期待インフレ率をFRBの目標である2.0%程度とした場合、3.5~4.0%程度が当面の名目政策金利の目途となるでしょう。勿論、リスクプレミアム等がありますので、その分を考慮する必要がありますが、米長期金利もその方向へ収斂することが想定されます。

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