学校の部活動、特に運動部の在り方の見直しに向けて、政府は学校と地域団体や民間企業の連携を促進している。

文部科学省のガイドラインでは、「学校と地域が協働・融合した形での環境整備」などが示されている。部活動の運営を民間事業者などに委託したり、地域のクラブチームと合同で活動したりすることで、教員の負担軽減を図ることを狙う。

民間事業者や地域のクラブチームに部活動の運営を担ってもらうには、彼らに経済的なインセンティブを感じてもらうことが必要である。経済産業省では「未来のブカツ」と題した実証実験を展開し、細かな運用方法や事業の経済性に踏み込んだ検証を進めている。例えばスポーツジム事業者が高校の空き教室にトレーニング機器を設置した事例がある。生徒にトレーニングメニューを提供すると同時に、地域住民にも機器を有料で開放することで収益性の確保を模索した。

学習塾とクラブチームの連携も検証されている。部活動への指導者派遣と部活後の教室での学習指導を有料で提供するモデルである。学校の教室を学習塾に無償で貸し出すことで、部活動の指導料を捻出する仕組みである。生徒にとっては通いやすく、学習塾としても集客しやすい。

これらの事例以外にも、運営資金の確保に向けて、企業版ふるさと納税やクラウドファンディングを活用する案などが提言されている。

部活動の地域移行を進めていくためには、大会への参加資格を民間クラブにも開放することや、条例などによって定められている学校開放の登録団体要件である「営利を目的としない団体」という表現を見直すことなども求められる。他にも、コーチの育成や確保なども課題として挙げられる。米国では部活動の指導に、指導資格をもつ外部コーチを登用することが主流である。コーチングや応急処置に関する一定のスキルを担保する仕組みが、国内でも求められるようになる可能性があろう。

欧州では地域社会や経済のエンジンと呼びうる「地域スポーツクラブ」が存在している。スポーツを介して学校と民間企業が繋がることで、生徒の部活動や社会人の生涯スポーツを包含した独自のサービス業の創出が期待できよう。

(野村證券フロンティア・リサーチ部 小川 裕一郎)

※野村週報 2023年11月27日号「新産業の潮流」より

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