WSTSの2023年秋季世界半導体市場予測

2023年・2024年ともに上方修正

米国時間11月28日に、世界の主要半導体メーカー43社で構成される業界団体、WSTS(世界半導体市場統計)が、2023年秋季の半導体市場の見通しを発表しました。今回の予測は、2023年9月までの実績値を基に作成されています。  

半導体市場全体は、2023年と2024年の予測が、前回発表時点(2023年6月)よりも上方修正されています。2023年は前年比-9.4%の5,201億ドルと、引き続き前年比縮小が予想されていますが、2024年については拡大に転じ、これまでの過去最高だった2022年の5,741億ドルを超えるという見通しとなっています。

生成AIがけん引、メモリーも回復へ

発表資料の中でWSTSは、2022年について、世界的なインフレやそれに伴う利上げ、地政学的リスクの高まりなどが個人消費や企業の設備投資等に影響し、半導体市況は年途中からメモリーを筆頭に多くの用途・製品で悪化したとコメントしています。

2023年については、2022年途中から続く下押し要因により、メモリーを始めほとんどの製品で年前半はマイナス成長であった一方、利用が急拡大している生成AIの恩恵を受け易いロジックの急増を始め、メモリーやマイクロなどの需要も改善して年後半に向けて市場は回復に転じており、通年では前年比一桁のマイナスに留まると予測されています。なお、省エネ・高効率化に必須のパワーディスクリートは年間を通して安定成長となる見通しとなっています。

2024年については、生成AI関連やパワーディスクリートの需要が引き続き成長することに加え、年後半からの景気回復期待を念頭に、電子機器全般の需要が拡大するとの想定が織り込まれたとコメントしています (下図表参照) 。

前年比伸び率を製品別についてみると、2023年はディスクリート(一素子一機能の単一機能製品)以外の製品は前年比マイナス成長となっています。ただし、WSTSが、生成AIの恩恵を受け易いとしているロジック製品については同-0.9%とマイナス幅が小幅で、2024年にかけては同+9.6%へと拡大が予想されています。

ディスクリートは、2023年、2024年にかけて、パワー半導体への需要がけん引するとみられ、前年比プラス成長が予想されています。なお、集積回路(IC)は電気を情報として扱いますが、パワー半導体は電気をモーターを動かすなどの動力源に用いる半導体です。  

メモリーは2022年に前年比-15.6%、2023年は同-31.0%と最も足を引っ張っていますが、2024年には同+44.8%と回復が予想されています(下図表参照) 。

6月時点の予測と比較すると

2023年6月時点の予測と比較すると、地域別では日本が、製品別ではオプトエレクトロニクスやアナログなどが比較的大きく下方修正されています。オプトエレクトロニクスやアナログは日本のメーカーが競争力を発揮している分野です。  

製品別では、マイクロやロジックが上方修正されていますが、生成AI普及に伴う需要の拡大が反映されていると推察されます。メモリーは、2023年に大きく落ち込み、2024年に回復するという方向に変化はありませんが、6月時点の予想よりは、上方修正されています。

半導体市場の回復がより鮮明に

今回発表されたWSTSの予測は、2023年と2024年の予測が前回発表時点よりも上方修正されています。加えて、生成AI関連や、省エネ・高効率化に必須のパワーディスクリートの需要が半導体需要をけん引するとコメントしています。  

米国の証券取引所に上場する主要な半導体関連30銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数の推移をみると、直近は株式市場全体を上回るパフォーマンスを示しており、株式市場でも半導体市場の回復を織り込み始めていると推察されます。

(野村證券投資情報部 村山 誠)

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