海外投資家が国内政治の安定性を評価している点には注意

12月以降、自民党がパーティーなどで得た収入を政治資金収支報告書に正確に記載していなかった問題が浮上しました。これを受けて、岸田文雄首相は対応に追われています。臨時国会の閉会に伴い、野党が政治資金問題を追及する場は一旦閉ざされました。しかし、先行きは不明で、政治資金問題がこれで終息する可能性は低いと見られます。

来年1月には通常国会が召集され、衆議院と参議院の予算委員会が開かれます。岸田首相をはじめとする閣僚が出席するため、野党が政治資金問題を追及する機会が再び訪れると予想されます。岸田政権は、野党や国民からの批判を避けることを優先せざるを得ず、政策の裁量幅が狭まることに注意が必要です。ただし、与党が衆議院において絶対安定多数を占めているという現状は動かし難いでしょう。野党は、対決色を示しながらも、政治資金規正法の改正など建設的な要求を打ち出す可能性が高いと見られます。

自民党の支持率も低下しているため、来年7月の解散総選挙の可能性は低くなったと考えられます。衆議院の任期満了は2025年10月で、来年7月の解散総選挙を先延ばしにする余裕はあります。とはいえ、もし解散総選挙が行われても、政権交代の可能性は低いでしょう。過去に非自民党政権へ政権交代した例としては、1993年の細川政権と2009年の鳩山政権がありますが、それぞれバブル崩壊とリーマンショック直後の事例です。現在、重大な景気後退や金融市場の混乱は起こっていません。

1988年に発覚したリクルート事件と今回の政治資金問題との類似性を指摘する人もいます。当時の竹下内閣が総辞職した直後に行われた1989年7月の参議院議員選挙では、自民党が33議席を失い過半数を割り込みました。しかし、バブル景気真っ只中ということもあり、翌1990年の総選挙では自民党が単独過半数を確保し、政権交代は起こりませんでした。

ただし、来年9月に予定されている自民党の総裁選挙については不透明感があります。もし岸田首相が総裁選挙に出馬しないとしたら、首相の後任となる候補が誰になるのかもまた不透明でしょう。政治資金問題で派閥が批判を受けている中、派閥のリーダーや派閥から推薦される候補者以外の候補が出る可能性もあります。

海外の投資家を中心に、グローバルなポートフォリオの中では、成長性が減速している中国に代わり、安定性のある日本が評価されているという見方があります。日本の安定性への評価には、政治の安定性も含まれます。市場における政治の安定性は大まかに以下の二つに分類されます。(1)岸田政権が小泉政権や安倍政権と同じように長期政権になる、(2)もし首相が交代したとしても、自民党と公明党による連立政権が続き、その経済政策も引き継がれる。海外の投資家は(1)への期待が高い印象です。もし岸田首相が来年9月に退任した場合、資金が日本から新興国などへ移る可能性があるため、その動きには注意が必要です。

(野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

要約編集元アナリストレポート

政治レポート – 国内政治:内閣改造と今後の政治情勢の見通し(2023年12月14日配信)」

(注)要約編集元アナリストレポートの発行日は2023年12月14日。画像はイメージ。
(出所)野村證券経済調査部などより野村證券投資情報部作成

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