金融政策の据え置きを決定、フォワードガイダンスも維持される

日本銀行は12月18~19日に金融政策決定会合を開催し、大方の事前予想通り金融政策の据え置きを決定しました。ブルームバーグの調査によれば、2024年4月までにマイナス付利撤廃を予想している回答者が65%、うち15%は24年1月会合での撤廃を予想しています。今回の会合では金融政策正常化に向けた地ならしとして、フォワードガイダンス(政策運営の指針)が修正されるのではないかとの見方もありましたが、こちらも修正はありませんでした。このため、本日15時半から行われる植田日銀総裁の記者会見が注目されます。

為替市場では、決定会合の発表を控えてドル円レートは142円台半ばで取引されていましたが、今回の結果を受けて143円台半ばへ1円程度、円安・ドル高が進行しました。ただし、この後の記者会見で植田総裁が金融政策正常化の可能性を否定するとは考えにくいことから、一方的に円安が進行する可能性は限定的だと見られます。

植田総裁の記者会見では、金融政策修正時期やマイナス金利解除後の追加利上げの可能性、国内政治の混乱やFRB(米連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)が利下げに転じた場合の政策判断への影響などに市場の関心が集まると考えられます。

なお、野村證券ではマイナス付利の撤廃は2024年1月会合、YCC(長短金利操作)政策撤廃は同年4-6月期(4月を有力視)と予想しています。2023年の春闘では約30年ぶりの高い賃上げ率で妥結されました。その後も、複数の企業から賃上げに積極的な声が聞かれるなど、企業の賃金設定行動に変化が見られます。日銀も「賃金と物価の好循環」達成に徐々に自信を深めている様子がうかがえます。野村では23年に続き、24年、25年の春闘でも前年比3.9%程度の高い賃上げが実現すると予想しています。このような企業行動の変化が、日銀に金融政策の正常化を促す要因となると考えています。

(野村證券投資情報部 尾畑 秀一)

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