進められるマイナ保険証への切り替え

医療費の増大や医師・看護師の不足といった課題を解決するべく、医療サービスのデジタル化が求められています。電子カルテやマイナンバーカードは急速に普及しつつあり、2023年11月時点で、マイナンバーカードが交付され、健康保険証の利用登録を行った件数は、7,100万件超となりました。

2024年秋には現行の健康保険証は廃止され、マイナ保険証に切り替えられる予定です。マイナ保険証によって、既存のオンライン資格確認等システムのネットワークへの接続が可能となり、即座に保険資格の有効性が確認できるなど、医療機関の事務負担は軽減されます。

電子カルテの標準化が進む

政府は2022年10月に医療DX(注1)推進本部を設置し、医療情報をスムーズに共有できる基盤づくりを進めています。

医療DX推進本部では、電子カルテの仕様を標準規格化することを検討しています。これにより、施設・ベンダー(注2)間で、情報の共有・交換がスムーズになります。全国共通の医療情報プラットフォームが構築されれば、電子カルテに様々なPHR(個人健康記録)(注3)が記録され、どこでも見ることが可能になります。

(注1)DXはデジタルトランスフォーメーションの略。(注2)ベンダーは製品を提供している販売元。この場合、電子カルテに関するソフトウエアやハードなどの販売元。(注3)PHR(Personal Health Record)の略称

(注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)内閣官房HPより野村證券投資情報部作成

PHRの利活用で健康長寿に

医療情報プラットフォームの整備が進めば、救急時に速やかに患者の医療データを救急隊員が把握できたり、過去受けた検査結果を転院先の病院で容易に把握できるなど、多くのメリットをもたらします。

さらに、スマートウォッチやウエアラブル端末などで計測される心拍数などの情報も加わったPHRは、利活用されることで医療費抑制のみならず個人の健康長寿にも貢献すると期待されています。

(注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

ご参考: データヘルス関連銘柄の一例

PHR関連

・オムロン(6645)

傘下企業のオムロンヘルスケアでウエアラブル血圧計「HeartGuide(ハートガイド)」を発売している。手首を加圧することで血圧を測定できる端末で、医療機器の認証を取得している。

・パラマウントベッドHD(7817)

マットレスや敷き布団の下に敷くだけで、睡眠・覚醒・起きあがり・離床および就寝時の呼吸数や心拍数を計測できるセンサー「眠りSCAN」を開発、販売している。得られたデータは、PCやモバイル端末でモニタリングできる。

・アップル(A0030/AAPL US)

活動量や睡眠状態の計測ができるだけでなく、簡易的ながら心電図アプリが利用できるなど、健康管理機能を充実させたスマートウォッチ「Apple Watch」を販売する。

・アルファベット(A株)(A4987/GOOGL US)

傘下のスマートウオッチメーカー、米フィットビットの高い技術を活用し、活動量や睡眠状態の計測といった健康管理機能スマートウォッチ「Pixel Watch」を販売する。

電子カルテ関連

・エムスリー(2413)

医療従事者向けポータルサイトm3.comを起点に多様な事業を展開する。人工知能を搭載した、クラウド型の電子カルテシステム「エムスリーデジカル」に強みを持つ。

・メドレー(4480)

電子カルテなどの医療機関における基幹システムに加え、予約/問診/オンライン診療といった周辺業務の効率化も支援するシステムオンライン診療システム「CLINICS」の提供を行う。

・JMDC(4483)

医療ビッグデータを活用したヘルスケア×ICTサービスを展開する。レセプト、健診等データを収集し、一次利用(保険者支援、PHR)、二次利用(製薬企業、生損保向けデータ利活用)サービスを展開している。

・PHCホールディングス(6523)

パナソニックのヘルスケア部門を前身に、診断・ライフサイエンス、医療機器を主とする多様な事業を展開する。1972年日本初のレセプトコンピューターを発売した。糖尿病マネジメントなど強みの分野を多数有する。

・富士通(6702)

グループで手掛ける電子カルテで国内トップクラスのシェアを持つ。新しい標準規格として海外で注目されているHL7 FHIRへの対応を2022年より進めるなど、電子カルテの標準規格化に取り組んでいる。

(注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

ご投資にあたっての注意点