先週:米経済の軟着陸と半導体好調、2つの期待

先週は、FRB(米連邦準備理事会)のウォラー理事による早期利下げ観測牽制発言や堅調な経済指標を受けて長期金利(10年国債利回り)が上昇したことから、週前半は軟調に推移しました。

しかし、18日(木)のTSMC(台湾セミコンダクター,米国預託証券(ADR)のティッカーコードはTSM)の2023年10-12月期決算発表で示された良好な24年1-3月期の見通しを受けて情報技術株主導で反発しました。

また、マクロ面でも19日(金)に発表された、1月ミシガン大学消費者センチメント指数速報値は78.8と、市場予想の市場予想の70.0を大きく上回り、2年6ヵ月ぶりの高水準となりました。ミシガン大学が併せて発表した消費者期待インフレ率調査の1月速報値は、1年先は2023年12月22日に発表された12月確報値の3.1%から2.9%に、5年先については同じく2.9%から2.8%に低下しました。強い消費者マインドとインフレの鈍化の組み合わせは、市場にソフトランディング(軟着陸)を想起させ、株価の追い風となりました。

19日にS&P 500 指数、ダウ指数共に史上最高値を更新しました。

今週のポイント1:26日(金)のPCE統計

金融政策関係では、1月30日(火)-31日(水)開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、FRB幹部は沈黙期間に入っていて、講演等は予定されていません。こうした中では、26日(金)の12月個人消費支出・所得(PCE)統計、特にFRBがインフレ指標として重視しているコアPCE(個人消費支出)デフレーターに注目が集まります。

12月コアPCEデフレーターの市場予想は前月比+0.2%(11月同+0.1%)ですが、6ヵ月平均では年率2%をやや下回る伸びに留まると見られる一方、12月個人支出の市場予想は同+0.4%(11月同+0.2%)と、堅調が予想されています。市場予想通りとなれば、先週のミシガン大学調査と同様、市場はソフトランディング期待を高めそうです。

今週のポイント2:25日(木)のインテルなど半導体銘柄決算

今週も米主要企業の2023年10-12月期決算発表が続きます、24日(水)にはラムリサーチ(LRCX)、25日(木)にはKLA(KLAC)、インテルと、半導体・半導体製造装置セクターの決算発表が予定されています。前週のTSMC決算の堅調さは個別要因によるものか、半導体業界全体に及ぶのかを確認できそうです。

2023年半導体・半導体製造装置セクターの株価が米国株式市場をけん引してきた背景には、同セクターの業績が2023年の反動ではあるものの、2024年に前年比+30.0%と高い増益率が予想されていることがあります。

(注)2024年1月19日時点のLSEG(旧リフィニティブ)集計による市場予想平均。産業グループ名に付されている(   )内の番号は、識別のために野村證券投資情報部で付与している番号。*は景気敏感業種。

(出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成

さらに、同セクターは2025年の予想に関してもS&P500の産業グループ内で上から2番目に位置づけられる高い伸びが予想されています。

(注)2024年1月19日時点のLSEG(旧リフィニティブ)集計による市場予想平均。産業グループ名に付されている(   )内の番号は、識別のために野村證券投資情報部で付与している番号。*は景気敏感業種。

(出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成

2年連続で高い伸びが予想される半導体・半導体製造装置セクターは、米国株全体の動向を左右します。実績・見通しともに市場期待を超えられるかが、今週の重要なチェックポイントとなります。

今週のポイント3:セクターを代表する3銘柄に注目

半導体銘柄の他にも、米国株やセクターを代表する銘柄が決算発表を迎えます。注目度の高い、NYダウやナスダック、NYSEファングプラス等の指数を構成する銘柄では、23日(水)のネットフリックス(NFLX)、24日(木)のテスラ(TSLA)、25日(金)のビザ(V)が挙げられます。ネットフリックスは、来週に予定されるメタ(FB)やアルファベット(GOOGL)といったメディア・娯楽セクターのスターターとも言え、注目が集まります。

その他、前回決算発表時の市場の反応は以下をご覧ください(ネットフリックスは今四半期の決算発表より決算速報をお届けします)。

ビザ(V):消費堅調継続・四半期見通しはやや市場予想を下回る、株価は-0.67%(時間外取引)

テスラ(TSLA):サイバートラックの出荷や年間生産台数の目標を維持、株価は-2.13%(時間外取引)

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点

世界産業分類基準(GICS

スタンダード&プアーズはモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)と共同で作成した世界産業分類基準(Global Industry Classification Standard=GICS)を採用しています。この世界産業分類基準の目的は投資調査及び資産運用のプロセスをより容易にすることによって、世界の金融専門家の便宜を図ることにあります。世界の投資家、投資顧問会社、投資アナリストなど各方面の専門家との議論に基づいて設計されたこの分類基準は正確、完全かつ標準化された産業の定義に対する世界の金融界のニーズに応えることを目的に作成されています。

世界産業分類基準は、11のセクター、25の産業グループ、74の産業、及び163の産業サブグループからなっています。(2023年3月時点)

業種の分類は主として売上高に基づいて行う一方、二義的な基準として利益を検討対象にするという方法を採用しており、事業毎または商品毎に精査・分析して行っています。

1つの企業は各階層で1つのグループにしか入ることができません。3つ以上の分野にまたがって事業展開している多角化企業で、売上高または利益のどちらかが全体の半分以上を占める事業部門がない場合は、コングロマリット産業サブグループ(一般事業会社セクター)、またはマルチセクター持株会社産業サブグループ(金融セクター)に分類されます。

分類は投資対象ユニバースを十分に反映するよう、毎年見直しを行います。