2024年2月、日経平均株価は38,000円台に達し、1989年12月に記録した史上最高値をうかがう展開となっています(追記:本稿は2月16日時点のデータを元に執筆しています)。本稿では、38,000円台奪還に業績面で寄与した業種を明らかにし、それらにはどのような共通項があるのかを見てみることにしましょう。

【民営化/規制緩和】‥1989年度以降の経常利益増加率の高い業種のうち(下図)、鉱業(INPEXなど)、通信、陸運(JR各社)、不動産、小売などは、(広義の)民営化や規制緩和の恩恵を受けて利益を増やしたと考えられます。1980年代半ば以降、日本では旧・三公社五現業(注1)の多くが民営化され、その一部では株式が公開され、新たにTOPIXに組み入れられています。また1990年代以降は、日米構造協議を通じた米国からの要請もあり、土地利用や小売店舗設置などに関する規制が大幅に緩和されました。

(注1)日本国有鉄道、日本電信電話公社、日本専売公社の3つの公共企業体(公社)、および、郵便、国有林野、紙幣等印刷、造幣、アルコール専売の5つの国の事業(現業)のこと。

【市場拡大】‥民営化や規制緩和の結果、市場が活性化し、新規参入企業が増加、利益拡大が加速した業種も複数存在します。通信では、1989年度時点で東証1部上場企業は10社にすぎませんでしたが、現在では181社に達しています。不動産は18社から52社、サービスも22社から161社へとそれぞれ上場企業数が増加しています。

【業界再編】‥業種内企業の破綻や退出、業界再編によるプレイヤー数の削減により、収益性を向上させた業種グループも存在します。海運は上場企業数が1989年度の13社から5社、石油・石炭製品も9社から6社に減少した結果、近年では安定して高い利益水準を維持することが可能になっています。

【海外展開/業態転換】‥卸売は、かつての口銭(注2)ビジネスが限界を迎え、現在では投資会社となっています。海外展開で最も成功したのは輸送用機械(自動車)でしょう。1989年当時、自動車は輸出製品の筆頭でしたが、現在主要国・地域では現地生産が一般的になり、為替の影響をほとんど受けない強靭な収益構造を手にしています。また、食品、医薬品といった内需系の色彩が強い業種でも海外展開を進め、海外の高い成長率の取り込みに成功しています。

(注2)売買の仲介をした場合の手数料のこと。

どうやら大きく利益を伸ばした業種のうち、34年前と同じ事業を今も変わらず行っている業種はほとんどないようです。東証は、昨年3月より企業に対して間断なく事業ポートフォリオを見直すことを求めています。この要請に従って企業が事業ポートフォリオ改革を加速させれば、日経平均株価の史上最高値38,915円(終値ベース)は単なる通過点になるのかもしれません。

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