※執筆時点 日本時間12日(金)12:00

今週:CPI減速でリバーサル

※7月5日(金)-7月11日(木)4営業日の騰落

今週の米国株式市場は、週前半にS&P500やナスダック総合が連日史上最高値を更新していましたが、11日(木)の6月CPI(消費者物価指数)の発表をきっかけにリバーサル的な動き(S&P500やナスダック総合は反落、NYダウや中小型指数であるラッセル2000が反発、本邦政策当局の円買い為替介入が加わった模様で円高ドル安)となりました。6月CPIは前月比-0.1%と市場予想(同+0.1%)や5月実績(前月比横ばい)を下回りました。ガソリン価格が同3.8%下落したほか、航空運賃や中古車価格も下落しました。

「バイデン降ろし」の声、高まる

米国では6月27日の大統領候補者討論会以降、民主党内でバイデン大統領に対して大統領候補から辞退することを求める声が高まっています。PedeictItの調査では当選確率はトランプ氏59%、ハリス氏29%、バイデン氏17%となっています(日本時間12日(金)7:51)。同調査で民主党の大統領候補となる確率はハリス氏が55%、バイデン氏が32%と既に逆転しています。バイデン大統領自身は撤退する意思がないことを繰り返し表明していますが、民主党の重鎮がバイデン大統領支持を明示しなかったこと等が報じられ、市場の憶測を呼んでいます。

猶予はあと3週間か

民主党の全国大会は、8月19~22日に予定され、1ヶ月先に近づいています。本来は、民主党予備選挙で選ばれた各州の代議員(どの候補に投票するか事前に誓約している)が、全国大会で投票を行い、正副大統領を選出する仕組みです。しかし、オハイオ州では、投票用紙に記載するために、8月7日までに各党の大統領候補を申請する必要があるため、全国大会の前、オハイオ州の申請期限前にオンラインで投票を行い、正副大統領を選出することが民主党内で検討されています。このため、バイデン大統領が戦い続けるのか、あるいは撤退して他の候補を選出するのかを決める時間的猶予は3週間程度と考えられます。

「もしトラ」リスクとの向き合い方は

市場ではバイデン大統領が撤退すると共和党(トランプ氏)が勝利する確率が上がると考えられており、「もしトラ(もしもトランプ氏が大統領になったら)」リスクが注目されます。トランプ氏が大統領となる場合のリスクを考えると、景気好調となっても減税や移民規制の強化などの政策を採用してインフレが再燃するのではとの懸念があります。金利が再上昇し株価全体の重石になるほか、政策の影響を受けやすい業種・企業にとっては意思決定や設備投資の一部が後ずれしうることも懸念材料です。

一方で、過去2回の大統領選挙に限ってみれば、株式投資のパフォーマンスを上げるチャンスでした。

過去はどちらの党の大統領誕生でも選挙後に争点の業種が上昇

(注)棒グラフの色は、当選した大統領の政党のイメージカラー(共和党は赤、民主党は青)。すべての業種・指数を網羅しているわけではない。大統領選挙日は、2016年11月8日と2020年11月3日。(出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成

S&P500は、大統領選挙から年末までに、共和党のトランプ氏が勝利した2016年は5%、民主党のバイデン大統領が勝利した2020年は11%上昇しました(S&P500の2016年/2020年の年初から大統領選挙前日までの騰落率はそれぞれ+4%、+2%)。

業種別では、エネルギーと金融は規制強化を主張する民主党と、規制緩和を主張する共和党で政策が分かれますが、2016年と2020年の大統領選挙後は、勝利した政党と関係なく、 S&P500を上回る上昇率となりました。さらに、米国の中小型株指数のラッセル2000や、日経平均も両年とも大統領選挙後に上昇しました。

民主党政権になった際に規制が強化される、また、トランプ氏が当選した際に政策の不確実性が高い、と考えて選挙前に投資を手控えた投資家が、選挙後に投資を復活させたためと考えられます。

今回の大統領選挙の前後で、株価の動向がどうなるか不透明感は強いですが、継続して投資することが中長期的な投資の観点では重要と考えられます。

来週①:FOMC前の高官発言に注目

今週も15日(月)のパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長のインタビューを始め、多くのFRB高官の講演等が予定されています。7月30-31日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)を前にFRB高官は20日(土)から沈黙期間に入ることから、発言内容への関心は高いとみられます。6月FOMC(米連邦公開市場委員会)では24年中は1回の利下げ見通しがFOMCメンバーの中央値となりましたが、議長、副議長やNY連銀総裁など執行部メンバーの多くは年内2回の利下げを予想していると見られることから、1回以下の利下げを予想したと想定されるFOMC委員の発言に変化がないかが注目されます。

今週発表される米国の経済指標では15日(月)の7月NY連銀製造業景気指数、16日(火)の6月小売売上高、17日(水)の6月住宅着工・建設許可件数、6月鉱工業生産、18日(木)の7月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が注目度の高い統計です。

来週②:4-6月期決算発表が本格化

米主要企業の2024年4-6月期の決算発表が本格化します。決算実績に加え、会社業績予想や経営陣コメントなどから、米国を始めとしたグローバル経済への示唆を確認していきたいと考えます。各業界を見るうえで注目される企業として、16日(火)のユナイテッドヘルス、17日(水)のジョンソン・エンド・ジョンソン、18日(木)のネットフリックスが挙げられます。

(編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭)

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