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2022年以降、日本を除いて先進国から新興国までほとんどの主要国が利上げを行ってきました。この間、為替市場では通貨選別のポイントとして金利差に対する注目度が高まり、主要通貨間での金利差と為替相場が高い連動性を持って推移してきました。

特に新興国通貨選別のポイントとして重視されたのが、名目金利からインフレ率を差し引いた「実質金利」です。新興国は固有のカントリー・リスクを有するため、金利水準の高さが必ずしも通貨の魅力と直結しない面があります。特に高いインフレ率は経済の脆弱性を反映しているケースが多く、古くは「購買力平価説」にみられるように、「相対的なインフレ率の高さが通貨安につながる」といった考え方があります。このため、インフレ分を差し引いた「実質金利」が通貨選別のポイントとして重視されたと推察されます。

実際、2023年の主要通貨の米ドルに対する騰落率を比較すると、メキシコペソやブラジルレアル、インドネシアルピアなど実質金利が米国を上回っていた新興国通貨は米ドルに対して上昇しました。一方で、インドルピーやトルコリラなど実質金利面での魅力が乏しい通貨は下落しています。

新興国が利上げを行ってきた背景には、インフレ抑制に加えて、特に対米ドルでの通貨安圧力の緩和を意図した面があったと推察されます。現在、多くの新興国ではインフレが鎮静化傾向にあり、米国の利上げが打ち止めとなったことから、中銀の政策姿勢は転換し始めています。

このような状況の変化に加えて、主要新興国の一部における国政選挙等の結果を踏まえて、市場では新興国通貨選別のポイントが実質金利から財政状況へと変化している様子がうかがわれます。

トルコ政府は財政健全化とインフレ抑制を目的に向こう3年間にわたり歳出を削減する計画を発表しました。南アフリカでは2024年5月の総選挙で民主化後初めてアフリカ民族会議(ANC)が過半数を割り込みましたが、閣僚人事を見る限りANCが主要な経済政策を担う見込みです。インドでも与党連合が予想外に苦戦しましたが、緊縮的な財政政策が継続する見通しです。インドネシアでも次期大統領の経済顧問が25年の財政赤字を法定上限であるGDP比3%未満にとどめる計画だと発言しています。このように、財政の健全性を重視する姿勢を示した新興国の通貨は24年4月以降も対米ドルで上昇しています。

一方、財政規律の緩和が懸念されるメキシコペソ、ブラジルレアルは24年4月以降、米ドルに対して大きく下落しています。市場の着眼点の変化は大統領選後の米国に向かう可能性もあることから、引き続き注視していく必要があります。

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