目次
・史上最高値更新は業績拡大への期待が背景
・FRBは9月に利下げへ
・米国企業業績の拡大は様々な業種に広がる
・中国を取り巻く通商問題に注意
・賃金と物価の好循環への信頼が強まれば利上げへ
・金利上昇局面ではPERの切上りも一般的
史上最高値更新は業績拡大への期待が背景
2024年2月の日経平均株価に続き、7月にTOPIXは約34年半ぶりに資産バブル期以来となる史上最高値を更新しました。米国では景気に配慮した利下げが近づきつつあります。我々は、米国株式市場は金融相場から業績相場に、日本株市場も業績拡大が続くことで、株式市場の好環境が持続するとみてきました。米中通商問題や米国大統領選挙など、政治的に不透明な問題はありますが、株式市場を見る上での基本観は企業業績との見方は変わりません。
FRBは9月に利下げへ
主要先進国・地域の経済成長率は、巡航速度に落ち着くとみられます。米国では雇用情勢の緩和とインフレの減速が進んでおり、FRB高官の一部からは、雇用の悪化リスクに配慮すべきとの意見がみられます。FRBの利下げ開始は9月からとの見方が強まっており、金融市場は年内2回以上の政策金利引き下げを織り込んだ状態にあります。
米国企業業績の拡大は様々な業種に広がる
米国大統領選挙については、共和党のトランプ候補の支持率が上昇しています。米国第一主義を掲げ、エネルギー産業への支援を打ち出す一方、輸入関税の引き上げや、特に中国に対する強硬姿勢を示しています。他方、バイデン大統領はハリス副大統領候補を後任候補に推薦しました。企業業績は、2024年末に向けて二桁増益への加速が見込まれています。AI関連の製品・サービスを手掛ける大手テクノロジー企業の業績が伸長してきましたが、その他の企業群もいよいよ増益に転じることで、米国企業全体の利益成長は加速するとみられます。
中国を取り巻く通商問題に注意
ユーロ圏はフランスや英国で議会選挙が実施されました。フランスでは極右勢力の躍進に歯止めがかかり、その後、金融市場は概ね落ち着いています。ユーロ圏では緩やかなペースでの利下げが続くとみられます。中国は不動産市況の不振による内需の停滞が続く中で、輸出を推進する動きが強まっています。米国や欧州と、中国との通商問題の高まりには注意が必要でしょう。
賃金と物価の好循環への信頼が強まれば利上げへ
日本では品質不正問題などから自動車産業の不振が続いているものの、電子部品をはじめその他の製造業の業況は好転入りが示唆されます。設備投資にも持ち直しがみられます。賃金上昇が明確化し、賃金と物価の好循環への信頼が強まれば、日本銀行による追加利上げが視野に入ります。2024年7月の金融政策決定会合では、国債買い入れの具体的な減額計画が発表されます。その後、野村證券は10月に利上げが行われると予想します。
金利上昇局面ではPERの切上りも一般的
円安の加速に歯止めをかけるため、政府は為替介入を実施しました。ただし、米ドル円相場の反転には、米国政策金利の引き下げが大きな鍵を握ります。日本の2024年度の企業業績は、円安の追い風もあって、4-6月期決算発表時に、年度当初の保守的な会社予想を上回る業績が示される可能性があります。また、企業の自社株買いは今後増加してゆくとみられます。景気拡大を起点とした金利上昇の中で、PER(株価収益率)の切上りは一般的です。野村證券は、2024年末の日経平均株価は42,000円、年内のレンジ上限は46,000円と予想します。
投資戦略については、短期的な調整局面があったとしても、基本観として、日米株式市場は企業業績の拡大に沿って推移するとみます。米国では政策金利の引き下げが株価の支援材料となり、日本の利上げは予想される幅では景気や企業業績の失速要因にはならないとみます。
(野村證券投資情報部 小髙 貴久)
※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 8月号」(発行日:2024年7月22日)「投資戦略の概要」より
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