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米国IT大手5社の2024年4-6月期業績は概ね堅調でした。売上高とEPS(調整後1株当たり純利益)はアマゾン・ドットコム(以下、アマゾン)の売上高を除き、各社とも市場予想を上回りました(下部図表)。

決算のポイントは、下記と考えています:
①AI活用で広告・クラウド事業での収益が増加
②AI関連の設備投資額予想が従来より増加
③消費者の低価格志向が強まった

インターネット広告は堅調でした。アルファベットは、主力のグーグル検索広告について、生成AI関連機能が業績に本格的に寄与しつつあるとコメントしました。メタ・プラットフォームズはSNS広告について、AIによる推奨機能強化が短時間動画の視聴数増加につながったとコメントしました。また、SNSサービスで利用される「メタ AI」が2024年末には最も利用されるAIアシスタントになるとの見通しを示しました。

クラウド事業の業績拡大にもAIが貢献しました。アマゾンは、クラウド部門のAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の成長が加速し、要因として生成AI関連の旺盛な需要が継続しているとコメントしました。マイクロソフトは、クラウド部門の主力サービス「アジュール」においてAI関連のユーザー数が増加した一方で、能力不足などにより増収率が市場予想を下回りました。マイクロソフトは、アジュールの成長は2025年1-6月期に加速する、との見通しを示しました。

各社ともAI関連の能力向上をコメントし、設備投資額の向こう4四半期の市場予想は、アップルを除く4社とも決算発表後に上方修正されました(アップルはサプライチェーン企業が設備投資を行う比率が高い)。ただし、アルファベットの設備投資額は、2024年4-6月期実績が132億ドルと市場予想を上回った一方で、2024年7-9月期と10-12月期は1-3月期の120億ドルと同程度かそれ以上、との見通しを示しました(下部図表)。実績よりも見通しの額が小さかったことで、AI関連の設備投資がピークアウトしたと一部の市場関係者が受け止めた可能性があります。アルファベットは実績が大きく上振れたのは支払いのタイミングなどが理由とコメントしました。

アマゾンのEコマース部門の売上高は市場予想を下回りました。消費者の低価格志向が、PCや電子機器といった比較的単価の高い商品にも波及しました。一方で、アップルのiPhone売上高は市場予想を上回りました。アップルのAIサービス「アップル・インテリジェンス」は、iPhoneの最新機種で利用可能となる予定で、アップルはAI関連の設備投資を拡大するとコメントしました。   

FRB(米連邦準備理事会)による引き締め的な金融政策が転換期に差し掛かるなか、米国経済の成長にとって重要な設備投資や個人消費の動向を見極めるうえでも、企業活動の状況が注目されます。

ご投資にあたっての注意点