目次
・時間の経過とともにボラティリティーは低下へ
・米国ではインフレより景気へ配慮
・米国企業業績の二桁増益への見通しは不変
・ユーロ圏は9月に利下げし、中国の景気減速は続く見通し
・日銀は時間をかけて市場が落ち着きを取り戻してから追加利上げを検討
・株価調整もファンダメンタルズは変わらず割高感が低下

時間の経過とともにボラティリティーは低下へ

2024年7月中旬以降、主要国の株価は大きく下落しました。株価下落と市場参加者のリスク回避姿勢が、スパイラル的に極端な下落を引き起こしたものの、日米の経済指標や企業業績の悪化は限定的です。時間の経過とともに、高水準のボラティリティー(変動率)は低下してゆき、市場は落ち着きを取り戻すとみられ、実体経済や企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿った株価に回帰するとみられます

米国ではインフレより景気へ配慮

主要国・地域の景況感は、製造業と比べて非製造業は比較的良好です。米国では、雇用情勢の緩和が進む中で、景気悪化懸念がみられます。しかし、家計の一部債務の延滞率は上昇するものの、金融機関への信用リスクは高まっておらず、消費関連の統計も巡航速度の拡大が続いています。インフレ率は鈍化しており、景気への配慮に対する優先順位が高まっています

米国企業業績の二桁増益への見通しは不変

パウエルFRB議長は、9月のFOMCでの利下げを示唆しました。金融市場は、年内は9月のFOMCから連続利下げが行われるとみているようです。米国決算発表で、2024年4-6月期は事前の市場予想からの上振れが幅広く見られ、2024年終盤以降の二桁増益への業績加速見通しは崩れていません。少なくとも、名目GDP成長率の拡大が続き、利下げが行われる局面で、企業業績が減益に陥るリスクは小さく、株価の復調は続くとみられます。米国大統領選挙は、ハリス副大統領が民主党の候補者となり、支持率は上昇しています。

ユーロ圏は9月に利下げし、中国の景気減速は続く見通し

ユーロ圏は、景気の回復力が欠ける中で、9月のECB理事会で追加利下げが行われるとみられます。中国では景気減速懸念が続く中で、政府の景気浮揚策は具体性に乏しい状況が続きます。中国の景気減速はしばらく続くとみられます。

日銀は時間をかけて市場が落ち着きを取り戻してから追加利上げを検討

日本では、製造業の在庫循環が改善に向かう中で、賃金上昇が景気を下支えするとみられます。日本銀行による7月末の追加利上げと、植田総裁の更なる利上げを否定しない姿勢が、急激な円高と株価調整の要因の一つとなりました。直後に内田副総裁が、金融資本市場が不安定な状況での利上げを否定しましたが、市場が落ち着きを取り戻し、経済・物価の見通しが実現してゆくならば、それに応じて追加利上げが行われるとみられます。一方、米ドル円相場は、米国の利下げがどこまで織り込まれたのかにも拠りますが、米国が利下げ局面に向かう中では、米日金利差の縮小により円安には戻りにくくなる可能性があります

株価調整もファンダメンタルズは変わらず割高感が低下

自民党総裁選に向けた動きが開始しています。総裁選挙後の新政権と自民党の支持率の回復によっては、直後に衆議院解散による総選挙の可能性もあります。2024年4-6月期の企業決算を受けて、2024年度通期の業績は上方修正が優勢です。株価の下落により、バリュエーション(株価に基づく企業価値評価)の割高感は大きく低下しています。野村證券は、2024年末の日経平均株価のレンジ上限を40,500円と予想します

投資戦略については、短期的な調整局面があったとしても、基本観として、日米株式市場は企業業績の拡大に沿って推移するとの見方は不変です。時間の経過とともに、ボラティリティー(変動率)も低下し、企業業績の強さが改めて見直されることで、極端に低下した予想PER(株価収益率)も修正されながら、株価は復調するとみられます。

(野村證券投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 9月号」(発行日:2024年8月19日)「投資戦略の概要」より
※掲載している画像はイメージです。

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