(注)画像はイメージ。
日米の金融政策の方向性の違いから円高傾向に
日本銀行が今年7月に追加利上げを実施した一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月に大幅な利下げを行いました。日米の金融政策の方向性の違いから、一時1ドル=160円台をつけていたドル円相場は大きく円高へと傾きました。直近では、石破茂氏が自民党総裁選で勝利したことも円高材料視されました。
では、過去に円高が進行した時にはどのような銘柄が上昇したのでしょうか。また、それらの銘柄にはどのような特徴があるのでしょうか。
これを分析するために使った指標が、「対米ドル円ベータ値」です。これは米ドル/円の為替変動に対して、市場全体の変動を超えて動く傾向のある(為替感応度が高い)個別銘柄に注目できる指標です。
ベータ値がマイナスで値が大きい銘柄ほど、円高ドル安の為替変動の影響を受けて上がったということを意味します。また、ベータ値=0は、その銘柄は為替変動の影響を受けなかったということを意味します。
(注1)対象はREITを除く野村アナリストカバー銘柄。レーティングが保留の銘柄は除外している。対米ドル円ベータ値の下位25銘柄を記載。全ての銘柄をグループ化しているわけではない。
(注2)各ベータ値は、直近60ヶ月(5年)の月末ベースの月間騰落率より算出(修正株価を使用)。米ドル円相場は日銀公表値終値(売り気配)を採用。直近値は2024年9月20日。1円の円安米ドル高による影響は、対米ドルで1円円安が進行した場合の営業利益への影響額で、野村證券エクイティ・リサーチ部の予想(2024年9月11日時点)。ただし、レーザーテック、太陽誘電、HOYAは税前利益が対象利益。1円の円安米ドル高による影響が記載されていない銘柄は為替の業績への影響が小さいと判断される銘柄。
(出所)東京証券取引所、日本経済新聞社、日本銀行、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成
円高時に上昇した銘柄の特徴とは?
過去(5年間)、円高米ドル安が進行した際に上昇した銘柄は、概ね下記のようなグループに分けられます。
① 円高メリットグループ
小売・食品など、円高により商品や原材料の仕入コストが低下すると期待される業種
② 円高無関係グループ
ヘルスケア、インターネットサービスなど、為替の影響を受けにくいとされる業種
③ 高成長期待グループ
成長期待の高い(実際に過去の増収率が高い)半導体・電子デバイス関連銘柄
④ 高ROEグループ
内需、外需問わず、ROEが高い銘柄
一般的には、①や②のように、他の業種に比べ、円高米ドル安が業績に好影響(あるいは影響が限定的)であるグループの銘柄が上昇すると考えられがちです。
ただ実際には、円高が業績的には不利に働くことが多い高成長期待銘柄や、ブルーチップ性の高い高ROE銘柄も数多く名を連ねています。
(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)