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日本銀行は2024年10月30~31日に金融政策決定会合を開催し、大方の予想通り政策金利の据え置きを決定しました。今後の政策運営に関して植田総裁は、「経済・物価見通しが実現する」に伴って利上げを続ける意向を示しています。

今回公表された日銀の展望レポートでは、実質GDP成長率は25年度が前年度比+1.1%(前回(7月時点)は同+1.0%)、26年度は同+1.0%(同+1.0%)、コアインフレ(生鮮食品除く消費者物価指数)は25年度が同+1.9%(同+2.1%)、26年度は同+1.9%(同+1.9%)との見通しを示しました。

24年9月の金融政策決定会合における「主な意見」を見ると、利上げの判断材料として「賃金と物価の好循環」の持続に言及する意見が大勢を占めています。また、リスクとして米国経済の行方や金融市場の不安定化が意識されています。このため、これらの条件がクリアーできれば、日銀は次回12月会合で追加利上げを行う可能性が高いと考えられます。

日銀は現在の利上げを「金融緩和の調整である」と表現しています。このことは、緩和し過ぎている政策金利を景気にとって中立的な水準に巻き戻しているに過ぎないという日銀の政策スタンスを表しています。

日銀は自ら想定している中立金利水準を明らかにはしていませんが、ワーキングペーパーの中で複数の「均衡実質政策金利」に関する研究論文を取り上げ、推計値を公表しています。日銀が推計した均衡実質政策金利の推計値は-1.0~+0.5%です。これに日銀が目指す物価安定目標のインフレ率である+2%を足すと、名目の均衡政策金利(中立金利)は+1.0~+2.5%となります。このため現時点では、「経済・物価見通しの実現」に伴って日銀が目指している政策金利水準は、最低でも+1%程度、中央値で見れば+1.75%程度が目安であると考えられます。

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(注1)均衡実質政策金利の推計レンジおよび中央値は杉岡優・中野将吾・山本弘樹『自然利子率の計測をめぐる近年の動向』(日本銀行ワーキングペーパーシリーズ No.24-J-9)の(図2)で示されたモデルの各データに基づき野村證券投資情報部でグラフを作成。
(注2)実質政策金利=無担保コール翌日物金利-日銀版コアコアCPI(生鮮食品・エネルギーを除く)の前年同期比。
(注3)データは四半期で、実質政策金利の直近値は2024年4-6月期。同年7-9月期以降の実質政策金利は野村證券経済調査部による予想。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成

市場参加者の間でも政策金利の着地点として+1%程度との見方が優勢です。一方で、「日本経済にとって+1%を超える政策金利水準は高過ぎるのではないか」との見方も根強いようです。現時点で日本にとって中立的な金利水準を決め打ちすることはできませんが、利上げが進展するに伴う利回り曲線の変化に注目することで、足元の政策金利と中立金利の距離感に対する市場の見方を確認することは可能です。具体的には、短期金利は利上げに伴って上昇する一方で、長期金利は政策金利が引き締め的な水準に近づくにつれて、将来の景気減速やインフレ低下を織り込んで、短期金利を下回る「逆イールド」へ向かうことが見込まれるためです。

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