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2024年も残すところあとわずかです。今年は、欧米が利下げに金融政策の舵を切る一方、日銀は周回遅れで利上げに踏み切るなど、金融市場が大きな転換点を迎えた年となりました。株式市場では、日経平均株価が7月上旬にかけて約34年ぶりに史上最高値を更新しましたが、8月初旬にブラックマンデー時を上回る過去最大の下落幅を記録するなど、一時激震が走りました。政治面では、共和党ドナルド・トランプ氏の次期米国大統領への返り咲きが決まるなど、さらなる激動を予感させる年の暮れを迎えています。
さて、毎年この時期に話題となる『干支』。2025年は「巳年」です。過去の巳年の金融・株式市場の動向を振り返ってみましょう。2025年の干支は、正確には『乙巳(きのと・み)』です。干支は「十干(じっかん)※」と「十二支」の組み合わせで成り立っています。「乙」は十干の2番目で、植物の生長サイクルに例えると、草木の幼芽が屈曲して伸び始める状態を指します。「巳」は十二支の6番目で「已(やむ)」に通じ、草木の成長が最盛期を迎えた状態を表します。動物は蛇(ヘビ)を当てます。古来、蛇は「神の使い」として信仰の対象とされ、脱皮を繰り返し成長するさまは「生命力」「復活・再生」の象徴とされます。総じて「乙巳」は、紆余曲折を経た努力が実を結び、将来にわたる成果となって現れる年と位置付けられそうです。
歴史を紐解くと、前回の「乙巳」は60年前の1965年です。前年の東京オリンピック開催の余韻が残る中、11月には戦後最長の57ヶ月間に及ぶ「いざなぎ景気」がスタートします。前年の東海道新幹線開業に続き、名神高速道路が全線開通、5年後の日本万国博覧会(大阪万博)開催が決定するなど、将来の経済大国へ向けて成長が加速していく年となりました。
戦前を含めた過去8回の「巳年」の日経平均株価の年間騰落率を見ると、上昇した年と下落した年の割合は5勝3敗(勝率62.5%)、勝率ランキングでは十二支の中で8位です。年間の平均騰落率は+6.7%で、こちらも全体の8位にとどまります(下図)。何だか冴えない印象ですが、アベノミクス初期の2013年(+56.7%)や平成バブル末期の1989年(+29.0%)など、高パフォーマンスの年もあり、戦前の世界恐慌時の1929年(-33.1%)などを除いて戦後だけに限れば、年間平均騰落率は+13.4%まで改善します。
十二支にまつわる兜町の相場格言には、『辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ。戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁盛、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる』とあります。ここでの「天井」はネガティブな意味ではなく、「高値で推移する」ことを意味します。2025年は「鬼が出るか蛇(じゃ)が出るか」。投資の機会を前にして「蛇に睨まれた蛙」となり、「長蛇(ちょうだ)を逸する」こと無きよう、金運や幸運を招くとされる「ヘビ」にあやかりたいですね。
※「十干」とは、「甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)」。
「十二支」と組み合わせた「干支」は60年周期で一回り(=還暦)する。
(注1)1921年(大正10)~49年(昭和24)はフィッシャ-式株価指数(グレー表示)、1945年の株価騰落率は9~12月の株価が発表されていないため、1946年1月の株価を使用して算出。1950年(昭和25)以降は日経平均株価。2024年は11月29日終値までの騰落率(日経平均株価:終値38,208.03円)。
(注2)勝率が高い順にランキング。赤丸は2025年の干支。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成