※執筆時点 日本時間1月24日(金)12:00

今週の振り返り

※1月17日(金)- 1月23日(木)3営業日(20日はキング牧師記念日で休場)の騰落

20日(月)にトランプ新大統領の就任式が開かれました。就任初日にメキシコ、カナダに対する25%の関税等、関税発動に関する大統領令に署名するのではとの警戒感がありましたが、就任演説や、当日公表された「米国第一の優先課題」は、2024年の大統領・議会選挙で繰り返し主張されてきた公約に沿った内容に留まりました。市場には安心感が広がり、米国株の主要3指数は揃って上昇しました。

ソフトバンクグループとオラクルおよびオープンAIによる米国内への4年間で5000億ドルのAI関連投資の発表、ダボス会議でのトランプ新大統領によるOPEC(石油輸出国機構)に対する原油価格の引き下げ要請等、ポジティブなニュースフローが週を通して株式市場への追い風となりました。

来週①FOMCはリスクか?

23日(木)-24日(金)に開催された日銀会合では0.25%ポイントの利上げが決定されましたが、利上げは事前に広く予想されていたことから株価への影響は比較的小さなものにとどまりました。一方、来週29日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)には注意が必要です。S&P500の向こう数週間の期日別オプションプレミアムを見ると、今週中は下方リスクを警戒している模様です。来週のFOMCでは金利据え置きがコンセンサスであることもあり、来週は警戒度が低くなっています。このため予想外に利下げが実施されたり、今後の利下げパスに関して声明や議長会見で想定以上にタカ派的(利下げに消極的)もしくはハト派的(利下げに積極的)な発言が聞かれた場合には市場にサプライズと受け止められる可能性があります。

据え置きの場合でも声明次第で株高/株安に

2018年以降のFOMCにおいて、政策金利据え置きの際の米国株価指数の反応を見ると、声明がハト派的な際の株高と、タカ派的な際の株安といったコントラストが目立っています。

注: 2018年以降のFOMCで政策金利が据え置かれた34回中、声明文のトーンがタカ派的であった11回、ハト派的であった11回、中立的であった12回に分けて株価指数の平均的な動きを算出。ハト派・タカ派・中立派はブルームバーグのLLM(大規模言語モデル)が判定。
出所: ブルームバーグ、野村證券市場戦略リサーチ部より野村投資情報部作成

FOMC声明文で、足元の堅調な景気指標が強調されるのか、それとも2024年12月CPI(消費者物価指数)の落ち着きや先行きのインフレ抑制見通しが強調されるか、そして今後の利下げ停止の可能性などが焦点となりそうです。

25年は24年よりもややハト派的か

注)野村セキュリティーズ・インターナショナルの政策姿勢についての評価。「FRB」は本部理事、地名は地区連銀名。「V」は25年の投票権を持つFOMC参加者であることを示す。FRB本部理事とニューヨーク連銀総裁は常に投票権を持つ。「26年」は2026年に投票権をもつことをを示す。フィラデルフィア連銀ハーカー総裁は25年6月に退任予定。
出所: 野村セキュリティズ・インターナショナルより野村証券投資情報部作成

FOMCでは常に投票権を持つFRB(米連邦準備理事会)議長・副議長・理事・ニューヨーク連銀総裁に加え、地区連銀総裁が輪番制で投票権を持つ仕組みになっています。投票権を持つ地区連銀総裁では、クリーブランド連銀ハマック総裁に代わり、カンザスシティ連銀のシュミッド総裁が投票メンバーとなるため、引き続き強力なタカ派的なメンバーが1名いることになります。しかし、2024年にタカ派的だったリッチモンド連銀バーキン総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁の3名に代えて、タカ派(セントルイス連銀ムサレム総裁)、中道派(ボストン連銀コリンズ総裁)、超ハト派(シカゴ連銀グルースビー総裁)が2025年の投票メンバーとなるため、全体としてはややハト派化します。

こうしたメンバー変更が、前述の声明文にどの程度影響しているのかに関心が集まります。

来週②:テスラ・マイクロソフトなど決算本格化

30日(木)にマイクロソフト(MSFT)、テスラ(TSLA)、メタ・プラットフォームズ(META)、サービスナウ(NOW)、31日(金)にアップル(AAPL)、ビザ(V)など多くの銘柄が2024年10-12月期決算を発表します。

新政権の政策は企業向けソフトウェアに有利か

トランプ新大統領が掲げる政策は、関税政策やエネルギー政策など相対的に米国内の中小企業に有利な政策を多く含みます。2025年は中小企業が一般業務で利用する企業向けソフトウェアに支出を振り向けることも大いに考えられます。マイクロソフトやサービスナウの見通しや経営陣のコメントに変化があるかを確認したいと考えます。

冬続く自動車業界

また、テスラに関しては消費鈍化や高止まりする自動車ローン金利の影響で厳しい自動車業界の中で堅調さを見せられるかに注目が集まります。2024年10-12月期の納入台数は既に発表されており、市場予想を2%ほど下回り、平均販売価格は前四半期比2,000ドルほど下落しています。ただ同社の業績は蓄電池をはじめとするエネルギー事業が高い粗利益率(約30%)が下支えすることで維持されている側面もあり、同部門の動向も併せて確認したいと考えます。

オンライン広告は製品構成の変化に注目

メタ・プラットフォームズなどのオンライン広告を手掛ける企業では、大きな環境変化はないものの、プロダクト構成の変化(例えば、フェイスブック上での短時間動画が占める構成の変化)や、X(旧twitter)に対抗して作られたThreadsの収益化など、ビジネスモデルの変化点が企業利益につながっているかが注目されます。

(投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

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