目次
・トランプ新政権始動も株価の基本はファンダメンタルズ
・トランプ新政権の政策は結局は親ビジネス的
・米国企業業績の拡大が続く
・中国は米国との通商問題が待ち受ける
・16年3ヶ月ぶりの政策金利水準への利上げも日本企業の業績拡大は続く

トランプ新政権始動も株価の基本はファンダメンタルズ

米国トランプ新大統領は、政権発足後に様々な政策を実行に移しています。その影響の良し悪しは市場で見極められておらず、今後も政策発表の際に、株式市場のボラティリティー(変動率)が高まり、時に下落する可能性もあるでしょう。しかし、米国と日本では2025年も経済成長が続き、企業業績も堅調とみます。我々は基本観として、株式市場は最終的に、実体経済や企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿って推移するとみています

トランプ新政権の政策は結局は親ビジネス的

米国ではトランプ新大統領が就任直後からメキシコやカナダ、中国などに対して輸入関税を賦課すると表明しています。しかし、これらは事前に表明されていた引き上げ幅と比べて限定的で、交渉の余地と経済への配慮を示すものとなりました。他方、デジタル課税等の国際的な枠組みからの脱退や、AIやエネルギー産業政策など、米国企業を支援する政策もみられます。トランプ新大統領の政権運営で、議会などとの折衝で政治的な混乱が起きる場合、注意が必要ですが、米国第一主義を掲げ、親ビジネス的な政策が進められるでしょう。一方、堅調な年末商戦や実質賃金上昇率が一定程度維持されるなど、米国経済は順調な拡大が続いています。

米国企業業績の拡大が続く

米国におけるインフレ率の減速は不十分で、2025年はFRBの金融政策について、利下げの打ち止めと一定の政策金利据え置き期間があるとみられます。一方、逆イールド(長短金利差の逆転)が解消し、金利からみる景気後退確率は、大きく低下しました。主要企業の業績は堅調で、AIなどの成長産業を背景に、ここ1~2年は大手テクノロジー企業が増益の中心となってきましたが、今後、業績拡大は徐々に様々な産業へと広がりをみせるでしょう

中国は米国との通商問題が待ち受ける

ユーロ圏では景気減速懸念がある中、ECBによる利下げが続くとみられます。他方、フランスで政治情勢が混迷していますが、国債市場へのリスクの広がりは限定的です。中国では内需が不振の中で、輸出増と人民元安が起きています。米国トランプ新政権による、断続的な対中制裁関税の引き上げ実施の可能性があり、交渉過程や影響を見極める必要があるでしょう

16年3ヶ月ぶりの政策金利水準への利上げも日本企業の業績拡大は続く

日本について、米国トランプ新政権の政策の影響は、現時点で十分見えていません。しかし、自動車を中心とする製造業の挽回生産や、特にソフトウエアの重要性が増している設備投資の増加、インバウンド需要の拡大や賃金の上昇など、様々な経済活動が景気を下支えするとみられます。日本銀行は、経済や物価の現状を踏まえて、2008年10月以来となる0.50%の水準へと政策金利の引き上げを行いました。適切なタイミングを見て追加利上げが検討されるとみられますが、野村證券は次の利上げは2025年7月と予想します。米ドル円相場は日本よりも米国の金利の影響を受けやすく、日本の利上げによる米ドル安・円高の動きは限定的でしょう。東証要請に対する企業の企業価値向上への対応が進み、収益性の改善が図られ、良好な経済・市場環境の下で、主要企業の利益は史上最高益の更新を続けるとみられます。野村證券は、2025年末の日経平均株価の予想を42,000円としています

投資戦略については、トランプ新政権の政策決定過程で政治リスクが浮上する場合は、経済や株式市場に悪影響が及ぶとみられます。しかし、米国を中心に経済や企業業績の拡大基調は続くとみます。株価変動が大きくなる局面があったとしても、最終的には日米の株価は企業業績の拡大に沿った推移になるとみます

(野村證券投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 2月号」(発行日:2025年1月27日)「投資戦略の概要」より
※掲載している画像はイメージです。

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