6月の前月比は+0.6%

 7月16日に米商務省が、2021年6月の小売売上高を発表しました。小売売上(合計)は前月比+0.6%となりました。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想の中央値は同-0.3%で、予想に反しての増加となりました。なお、5月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の同-1.3%から、同-1.7%に下方修正されました。

 前述の通り、市場予想では小売売上(合計)は前月比減少が予想されていましたが、予想に反して増加となり、かつ業種別にみると、多くの項目で増加しています。百貨店、電気製品、衣料品、飲食店などで増加しており、ワクチン接種が進み、ソーシャルディスタンス(社会的距離の確保)の措置が緩和され、人々の屋外での活動が再開されつつあることや、職場への復帰が進みつつあることを反映しているとみられます。

 一方、自動車・同部品は同-2.0%と減少しています。サプライチェーン障害の影響で、販売店における在庫水準が低くなっていることを反映している可能性が考えられます。

 なお、小売売上高には、旅行や宿泊などの分野は含まれておらず、これらの動向については、当該統計からは読み取れません。

6月の前年同月比は+18.0%

 次に、前年同月比について見てみると、小売売上(合計)は前年同月比+18.0%でした。5月分については、速報値の同+28.1%から同+27.6%に若干下方修正されています。

 前年同月比についてはすべての項目が増加しており、前月比と同様、衣料品や飲食店、百貨店などの増加が目立ちます。

伸び率は鈍化も引き続き高い伸びに

 前年同月比の推移をみてみると、小売売上(合計)は、3・4月に大きく伸び、その後伸び率は鈍化しています。

 とはいえ、5月改定値は前年同月比+27.6%、6月は同+18.0%と、歴史的にみれば高い水準が続いています。

無店舗販売は前月比増加に戻る

 オンライン小売を含む無店舗販売は、5月速報値では前月比-0.8%、前年同月比では+7.9%となっていました。今回、5月分については前月比は-2.3%、前年同月比は+6.7%に下方修正されました。

 6月は前月比+1.2%、前年同月比は+12.0%と、前月比は増加に転じ、前年同月比も伸び率が拡大しています。人々は引き続き、オンライン小売を積極的に活用していると推察されます。

消費者は短期的にはインフレを意識か

 16日には、7月ミシガン大学消費者マインド指数も発表されました。7月速報値は80.8と、市場予想平均の86.5を下回り、6月確報値の85.5から大幅に低下しました。低下した要因についてミシガン大学は、「住宅や自動車、家庭用耐久財の値上がりに対する消費者の不満」を指摘しています。

 同調査では消費者の期待インフレ率も調査しており、7月の1年先は前年比4.8%と6月の4.2%から加速しています。5年先については7月は2.9%と、6月の2.8%から小幅上昇にとどまっています。消費者は長期的にインフレが加速するとはみていないものの、目先についてはインフレ傾向が強まるとみていると推察されます。

今後のチェックポイント

 インフレは、購買力を低下させることから消費者心理にはマイナスの影響がある一方、必要なもの、ほしいものについては値上がり前に購入しようとさせる側面もあります。

 次回、7月分の小売売上高は8月17日に発表予定です。発表された際には、業種別の内容などを精査し、インフレ動向が個人消費に影響していないかなど、状況を確認していきたいと考えます。

(村山 誠)

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