来週の注目点:米国の予算審議、通商協議、日米の物価動向

トランプ政権の政策や、景気動向、インフレを巡る不透明感が再び強まっています。世界的な株価の大幅反発をもたらした米中の関税率引き下げは、90日間の暫定措置です。第1次トランプ政権時には米中協議が合意に達するまでに1年半を要しており、今政権下でも交渉が長期化する可能性があります。中国以外の主要国と米国との通商協議も相次いで行われており、目が離せない状況が続きそうです。

また、米議会では予算審議が活発化しつつあります。今後は、法人税減税や、個人所得税減税の延長、連邦法定債務上限引き上げなど、政策の重心が財政政策へとシフトすると予想されます。いずれも議会での可決が必要ですが、共和党内でも意見が対立するなど、政策の実現は容易ではないと見られています。仮に実現した場合には景気を下支えする効果が期待される一方、財政赤字の増加懸念が米長期金利を押し上げ、株式市場の上値を抑える可能性があります。

米国の経済指標では、5月27日(火)に4月耐久財受注、5月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)、28日(水)に5月FOMC議事要旨、30日(金)に4月個人消費支出・所得統計、5月シカゴ購買部協会PMIの発表が予定されています。中でも注目は、FRBが物価動向の指標として重視する個人消費支出・所得統計のPCE(個人消費支出)コア価格指数です。4月CPIでは明確な証左はなかったものの、関税引き上げの影響が注目されます。

日本では、30日(金)に5月東京都区部消費者物価指数が発表されます。コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は、春の引っ越しシーズンにおける家賃の引き上げなどを受けて加速したと野村では予想します。また、同日に発表される4月鉱工業生産では、トランプ関税への懸念が生産を下押し、前月比でマイナスに転じると見ています。

(野村證券投資情報部 坪川 一浩)

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