
(注)画像はイメージです。
企業業績の成長が株価上昇の中核
トランプ政権の関税が強化され、その影響はこれから出てくるものもあるとみられます。一方、2025年8月に、日経平均株価は1年1ヶ月ぶりに史上最高値を更新しました。米国S&P500指数は、史上最高値の更新を続けています。我々は、リスクの所在が明確化し、主要国・地域の経済や企業活動などへの悪影響は克服可能/限定的となれば、企業業績の復調や拡大と共に株式市場への信頼感は回復してゆくとみており、この見方は現在も不変です。
FRBの利下げ期待が高まる
米国ではトランプ政権による相互関税の追加の課税が発動し、8月7日の船積み、10月5日以降の通関以降の適用が開始されました。インドやブラジルなどの主要新興国に対して高関税が課され、半導体など重要品目に対しては自国産業の保護に向け、更なる関税実施が宣言されています。一方、貿易や小売り、物価などの統計に大きな変調は見られず、企業が負担を一部肩代わりしている可能性があります。雇用に減速がみられ、市場では利下げ観測が高まっています。2026年5月で任期満了となるパウエルFRB議長の後任人事の議論が進みますが、FRBの独立性や信認が揺らぐ場合、市場では金利上昇や米ドル安に進む可能性があります。
テクノロジー分野は米国の成長の中核
米国企業業績は、関税政策の影響を受けるセクターは厳しい状況にありますが、その影響を受けにくく、政権が成長を支援するテクノロジーセクターは業績の拡大が続いています。AIサービスや関連するデータセンターなどの分野に対する投資が加速しています。今後も、AIを中心とするテクノロジー分野は、米国経済や企業業績の中核であり続けるとみられます。
中国の景気対策への期待
ユーロ圏は米国との関税交渉も大筋決着し、インフレ率や景況感も落ち着き始めており、利下げ局面は終了したとみられます。中国は米国との事実上の関税交渉の期限が11月10日まで延長されましたが、具体的な交渉の進捗は聞こえていません。不動産市況を中心に国内経済が弱含む中、有効な景気対策が打ち出されるかどうか、今後の政治日程が注目されます。
日本の企業業績は2026年度に再拡大へ
日本は米国との関税合意後、実務上不利な措置が採られたままで、米国に対して早期の是正を求めています。修正は早くて9月中旬までかかるとの見方があります。一方、主要企業を中心に関税への対応は進められており、在庫水準は抑制されています。国内経済は、実質賃金上昇率が低迷しており、生活に密着した食料などの体感物価は厳しい状況です。日本銀行は、米国との関税合意などで局面が変化したことから、経済・物価情勢の改善に応じて追加の利上げを行う姿勢を見せ始めています。物価高への配慮から、経済対策の実現に向け、与野党間の議論が進められています。このようなインフレや国債増発への思惑から、国債利回りは償還期限の長い超長期債を中心に上昇が続いています。2025年度の企業業績は減益が予想されています。ただし、為替は現状の水準であれば、企業業績への影響は大きくありません。足元の企業業績の方向感には底打ちの兆しがみられ、2026年度は2桁増益が見込まれています。野村證券は2025年末の日経平均株価の予想レンジ上限を45,000円とみます。
投資戦略については、トランプ政権の関税政策や日米政治情勢の不透明さから、株式市場のボラティリティー(変動率)が高まる場面はあるとみます。しかし、関税の影響を受けにくく、成長が続くテクノロジーやサービスなどの業種を基軸とする見方は変えません。悪材料の一巡と共に企業業績が復調に向かうならば、株式市場の評価は進むとみます。
※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 9月号」(発行日:2025年8月25日)「投資戦略の概要」より

野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
小髙 貴久
1999年野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。日本の経済・財政・金融動向、内外資本フローなどの経済・為替に関する調査を経て、2009年より投資情報部で各国経済や為替、金利などをオール・ラウンドに調査。現在は日本株に軸足を置いた分析を行う。2013年よりNomura21Global編集長を務める。