新型コロナ感染拡大は特需に影響

 2021年2月より、国内で新型コロナウイルス(以下コロナ)ワクチンである①ファイザー/ビオンテック製、②モデルナ製、③アストラゼネカ製の3種類を用いた接種が開始されているが、デルタ株やラムダ株といった変異型が新たに流行している。コロナ感染患者数は増加傾向で、コロナ関連事業を行うJCRファーマ、タカラバイオの業績に大きく寄与している。

 JCRファーマは、アストラゼネカが開発を進めるアデノウイルスを基にした新型コロナワクチン「AZD1222」の原薬製造を受託している。国内9,000万回分の供給を締結しており、22.3期Q1(第1四半期)は36.7億円の増収要因となり、野村では22.3期に147億円の売上貢献を見込んでいる。

 タカラバイオでは、新型・変異型コロナ検出用のPCR 試薬やPCR 装置の売上高が21.3期に続き高い水準を維持している。PCR 試薬の売上高は21.3期で約130億円、22.3期Q1で約70億円に達している。野村ではQ2以降のコロナ特需が下期から下落傾向を示すと想定しているが、①国内新型コロナ・変異型の感染拡大、②PCR検査試薬需要の高さ、③一般試薬の回復の速さ、を考慮し、22.3期試薬事業売上高は会社想定を上回る444億円(一般試薬: 256億円、PCR 試薬:188億円)に達すると予想する。

感染拡大を抑制する治療薬が開発中

 コロナはRNA を基本構造とするウイルス(レトロウイルス)であり、絶えず変異しているため、変異型の発生率が高いことが特徴である。ワクチンを接種しただけではヒトへの感染を完全に抑え込むのは難しいため、各製薬企業は様々なモダリティ(仕様)やアプローチを駆使しながら、変異型を含むコロナに対する治療薬の開発を迅速に進めている。

 ペプチドリームが開発を進めるPA-001は、コロナウイルスの細胞表面上に発現するスパイクタンパク質のS2ドメインに作用し、ウイルスが人体に侵入するのを阻害するペプチド医薬品である。非臨床試験において、新型株だけでなくイギリス株、南アフリカ株及びブラジル株など様々な変異株に対しても高い抗ウイルス活性が示唆されている。動物モデルを用いた安全性の検討において、有害事象の発生などは報告されていない。同社では、21年中の臨床試験開始を目指しながら、開発パートナー候補と協議を進めている。

 そーせいグループのSH-879は、ウイルスの複製に重要な役割を担うMPro(メインプロテアーゼ)を阻害する低分子経口薬である。1日1回または2回投与を想定しており、非臨床試験段階ではあるが、P2/3(フェーズ2/3)試験中のPfizer 社: PF-07321332(プロテアーゼ阻害剤)と同等の抗ウイルス活性を示している。動物モデルを用いた検討においても、経口投与による高い血漿中濃度を示しており、現在は臨床試験開始に向けた検討を進めている。

(松原 弘幸)

※野村週報2021年9月13日号「産業界」より

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