仮にデフォルトしても影響は中国債券内に留まるか

 中国不動産大手の中国恒大集団で過剰債務問題が深刻化しています。今回は、仮に恒大集団がデフォルト(債務不履行)した場合の影響について考えてみます。

 恒大集団のドル建て債債務残高は140億ドル程度と規模自体はそれほど大きくありません。しかし、中国系不動産会社のドル建て債は全体で2,000億ドル程度あり、恒大集団が約7%を占めています。仮に同社が債務超過でデフォルトになる場合、他の中国系不動産のドル建て債の売りや、中国企業のドル建てハイイールド債売りという連鎖反応につながる可能性が高いと考えられます。

 中国は昨年後半から不動産の引締めを始めましたが、主に不動産の供給側からの対策(企業財務の健全性指導、新規土地の買い入れ抑制)であり、販売及び建設活動の調整にはこれまで繋がっていませんでした。

 一方で、需要側の規制強化(住宅ローン、その他の住宅購入に使われる銀行貸出への窓口指導など)は今年の5-6月以降に実施されました。そのため、住宅販売の調整(開発業者の資金繰り悪化)は、8月に入ってから顕在化し始めており、10-12月期には住宅販売と住宅建設がともに減速するリスクが高まっています。この環境下では、中国民間企業のドル建て債への投資センチメントの悪化や、人民元安方向の圧力に注意すべきでしょう。

 ただし、世界景気への影響は限定的だとみています。現在、中国の景気循環は欧州と米国の景気循環と乖離しつつあると考えられます。確かに欧米の年末商戦を控えて輸出が中国景気を牽引していることは否定できません。しかし、中国当局は現在、ハイテクなどの内製化を強力に進めており、相当程度国内で循環する(双循環)政策を志向しており、従来よりも外需依存が低下方向となっています。

 他セクターへの影響についても考えます。中国当局は、ある程度市場原理に任せる形で不動産市場に緊張感を与え、モラルハザードを回避する意向だと思われます。ただし、他セクターへの連鎖的波及を避けるために、国有銀行からの融資を拡大する、預金準備率を引き下げるなどの政策を通じて「コントロール下でのデフォルト」を基本路線としています。

 これらを踏まえると、仮に中国恒大がデフォルトした場合でも、その影響が世界景気や他セクターなど中国債券以外に広がるリスクは現状高くないと考えられますが、引き続き注視すべきでしょう。

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