世界的に消費者物価が大きく上昇している。エネルギー価格の上昇だけでなく、原材料不足や人手不足などの供給制約の中で新型コロナ危機後からの需要回復が消費者物価を大きく押し上げている。金融市場でも将来のインフレ上昇が加速するとの見方が強まっている。

 実際に起こった物価上昇率ではなく、人々のインフレに対する将来の予測値は期待インフレ率と呼ばれている。市場が推測する期待インフレ率として、ブレークイーブンインフレ率(Break Even Inflationrate、略してBEI)がある。BEI は物価連動国債の売買参加者が予測する年平均物価上昇率を示している。各国のBEI の動きを見てみると、全般的に大きく上昇する傾向にある。

 ただし、水準の比較においては注意が必要である。例えば英国のBEI は相対的に高水準となっているが、英国のBEI 算出には小売物価指数、他の国では消費者物価指数(日本は生鮮食品を除いた消費者物価)が用いられている。小売物価指数は住宅ローン利払いを含んでいることから、消費者物価に比べて高い伸びとなる傾向がある。

 また、専門家からはBEI の将来インフレ率に対しての予測精度は高くないとの指摘もある。原油価格などの商品価格がBEI の動きに大きな影響を及ぼしており、BEI の上昇が必ずしも先行きのインフレ上昇につながるわけではない。先進国の中央銀行において2%をインフレ目標として定めているところが多く、BEI はほとんどの主要国で先行きのインフレ率が長期的に中銀目標に到達することを示唆しているものの、各国中銀の予想においては来年以降のインフレ上昇ペースは減速していくとの見方が多い。今後もインフレの高止まりが継続するのか、注目される。

(春井 真也)

※野村週報2021年11月22日号「経済データを読む」より

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