経口剤コロナ治療薬ではファイザーとメルクが先行

 経口剤コロナ治療薬の普及に注目が集まっています。同治療薬は自宅で服用できる利便性がある他、デルタ株やオミクロン株など変異株の影響を受けにくいとされています。同治療薬では、ファイザーのパクスロビドとメルクのモルヌピラビルが先行しています。両薬剤ともに、臨床試験の第3相試験で死亡率および入院率の低下が示されており、有効性は実証済みです。2021年12月時点では、パクスロビドは2022年末までで1億2千万人分、モルヌピラビルは2千万人分が生産されると報じられています。

 ファイザーとメルクの経口剤コロナ治療薬は、2022年1~3月期には先進国での浸透が始まると見込まれます。新興国での浸透に関しては、ファイザーは、国連が支援する医薬品特許プール(製薬会社が自社の保有する治療薬の特許権を他社と共有し、その見返りとして特許の使用料を受け取る仕組み)とライセンス契約を締結し、低中所得95ヶ国を対象に治療薬の後発薬の製造を認めるとしました。2022年後半には新興国でも一定の浸透が図られる可能性があるでしょう。

 経口剤コロナ治療薬について、日本企業では塩野義製薬(4507)が開発しているS-217622に期待が集まります。2021年9月に第2/3相試験を開始しており、野村證券では申請・承認は2023年3月期とみています。臨床試験で良好な結果が得られれば、世界的な需要へとつながる可能性があります。なお、同社は2022年4月以降、50万人分の供給能力を確保する計画です。

オミクロン株はコロナワクチンの3回目投与で予防可能か?

 世界人口の約6割が少なくとも1回のコロナワクチンを接種していますが、オミクロン株の登場によりブースター接種の必要性が話題となっています。英国オックスフォード大学の研究論文では、アストラゼネカまたはファイザーのワクチンを2回接種した人の血液サンプルを分析した結果、オミクロン株に対応できる十分な中和抗体(重症化を防ぐ抗体)が形成されていないとされています。

 一方、イスラエルの研究者の報告によると、ファイザーのワクチンを3回接種した人と5~6ヶ月前に2回目を接種した人の血液検体にオミクロン株を投与したところ、後者では中和抗体活性が見られませんでしたが、前者は後者に対し100倍の中和抗体活性が見られたとしています。今後、コロナワクチンの3回接種が全世界的に広がる可能性があります。

 日本企業のワクチン開発では、塩野義製薬のS-268019が期待されます。当社は、2021年12月には治験の最終段階に入ったと発表しており、承認申請を経て、2022年3月に商業生産を開始を目指しています。2021年7月に当社は年間1億2,000万回分(6,000万人分)を提供できると発表しており、日本人口の約50%をカバーできることになります。

 第一三共(4568)はDS-5670を開発しています。同社によると、DS-5670は、ファイザーやモデルナのワクチンと比較して、簡易かつ安定性が高く、取り扱いが容易になり、副作用の低減も期待できるとしています。2023年3月期内の商業化が予定されており、日本市場での流通が想定されます。

(注)2021年12月27日時点の情報を基に作成

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