米国長期金利に上昇圧力がかかり始めました。10年債利回りが一時1.9%台(※1/19日時点)まで上昇し、その後も神経質な動きが続いています。今後も長期金利は上昇傾向を辿り続けるのでしょうか。

 足元、FRB(米連邦準備理事会)が利上げに向けて動き出しています。12月の米消費者物価は前年比+7.0%と約40年ぶりの高い伸びを記録し、FRB高官によるタカ派発言も相次いでいます。マーケットでは1-3月中にも利上げが開始され、夏場までにもう一度の利上げ見込む向きも多くなってきました。

 しかし、今後も長期金利が上昇傾向を辿り続けるか否かを判断するためには、想定されるFRBの利上げ幅とそのペースを検討する必要があると思います。

 まず、利上げ幅について考えてみましょう。確かに、米国経済はコロナ禍から順調に回復してきています。しかし、オミクロン株の影響など、盤石とは言い切れない部分も残ります。こうした状況下、FRBとしては、インフレ抑止は当然としても、利上げによる実体経済への悪影響を避けるため、当面は、実質金利を水面下に留める必要があると考えるのではないでしょうか。物価連動債ベースでみた現状の実質金利がマイナス1%程度で推移していることを考えれば、計算上は100ベーシス、一回に25ベーシスで4回の利上げが当面の上限ということができるかと思います。そうした意味では、年4回の利上げも許容範囲と言うことができそうです。

 しかし、問題はそのペースです。今回の物価上昇は需要の強さもさることながら、コロナ禍で物流・人流が滞り、部品や労働力等の供給不足で発生している面が強いことも忘れてはなりません。年末に向け、コロナの影響が薄れてくれば、部品等の供給が復活し、物価上昇圧力は低下してくることも考えられます。

 また、実体経済も年後半から状況が変化してきます。年前半はコロナ禍からの回復という意味で高い経済成長率が見込まれています。しかし、夏場以降は、これまで打ち出されてきた経済政策の効果が薄れ始め、2023年に向けて経済成長率の巡航速度への鈍化が予想されています。加えて、11月には米国議会中間選挙が予定されています。バイデン政権の支持率が低迷する中、中間選挙に向けて、民主党と共和党の対立は当然としても、民主党内部の対立も各種政策実行の足かせになります。この様に財政的なサポートに多くを頼れないなか、米国経済を巡航速度へとソフトランディングさせるためにも、「利上げを敢えて急ぐ必要があるのか」という議論が出てくる可能性があるのではないかとも思うのです。

 インフレの加速リスクは今後も長期金利を押し上げる方向に働き続けるでしょう。しかし、特に、中間選挙に向けた経済・政治情勢を勘案すると、年後半には、FRBの利上げペースが変化する可能性もあります。今年一年、米国長期金利の方向性を決めるインフレ以外の要因からも目が離せません。

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