コロナ禍でEC利用者が拡大

 新型コロナウイルスの感染拡大は、外出しなくても買物ができるECの普及を加速させました。国内では、ECを日常的に利用している20~30代に比べ、利用頻度が低かった高齢者層に利用が広がっています。また、商品毎のEC化率では、これまで実店舗販売が主流だった食品分野等で急速にEC化が進んでいます。

受け取りサービスの多様化も追い風に

 ECの利用急増に対応するため、各社では、顧客がECで注文した商品を店頭やコンビニエンスストア等で受け取れるサービスを拡充しています。イオンでは、2020年3-5月期にネットスーパーの会員数が前年同期比4倍超になると同時に、4月下旬からドライブスルー受け取りの本格展開を始めました。また、ヤマトホールディングスでは、2020年11月よりECで購入した商品を全国のスーパーやドラッグストア等で受け取れるサービスを開始しました。顧客の利便性を高めるこれらの取り組みは、EC市場拡大の追い風となるでしょう。 

物流施設拡充の動きが広がる

 EC利用の拡大を背景に、賃貸型物流施設の需要が急増しています。2020年10月の東京圏の物流施設の空室率は、0.4%と過去最低の水準となっています。大和ハウス工業は、物流施設の需要増加に対応するため、2022.3期までの中期経営計画の総投資額を当初計画から約3割増額し、1兆3,500億円とするなど、物流施設の開発を拡大しています。

 米国のアマゾン・ドット・コムは、圧倒的な強みを持つ豊富な品揃えと即日配送の機能を更に強化しています。2019年には、前年比2倍となる6,000億円を投じ、日本での自社物流の整備を行っています。  一方、ファーストリテイリングがEC専用の自動倉庫を稼働させるほか、イオンや西友もEC向けの自動倉庫を増設するなど、実店舗を持つ小売企業が物流体制を強化する動きもみられています。

物流施設自動化推進のための需要拡大に期待

 ECの物流では、多種にわたる商品を迅速に消費者の元へ配送することが必要となります。EC物流施設には、多頻度で、迅速な個口配送を可能とする配送設備の設置等、従来の商品保管型の倉庫とは異なる専用のレイアウトが必要になります。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大リスクを避けるために非接触での作業が求められる中、自動倉庫のような最先端の物流施設への需要が高まると予想されます。

 ファーストリテイリングは、世界中の物流倉庫の完全自動化に向け、マテリアルハンドリング(工場や倉庫向け搬送システム)世界最大手ダイフクと協業しています。商品にRFID(無線自動識別)のタグを付け、検品の完全自動化や自動入出庫等に取り組んでおり、EC向け倉庫での顧客オーダーから出荷までの所要時間が、従来の8~16時間から、15分~1時間へと大幅に短縮することに成功しています。

 このような最先端の物流施設を持ち、発注から商品が届くまでのスピードを速めることは、在庫回転率や顧客満足度向上につながるとみられ、輸送や流通での自動化推進のための需要拡大が期待できます。

(注1)全ての銘柄を網羅しているわけではない。
(注2)HDはホールディングスの略。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(澤田 麻希)

業種分類、Nomura21 Globalについて
ご投資にあたっての注意点