
仕事柄、マスコミの株式担当記者と会話する機会が多いのですが、2月に入って「物色動向がよくわからない」というつぶやきをよく耳にします。何が物色動向をわかりにくくしているのか、今回はいくつかの切り口から株式市場を覗いてみることにしましょう。
【業種から見える世界】 2月に入ってからの上昇率が高い業種には、①新型コロナの影響で極端に業績が落ち込んでいる(空運)、②世界経済がよほど強くならないと評価しづらい(鉱業、海運、鉄鋼、非鉄)業種が上位を独占しています。逆にこれまで相場をリードしてきた電気機器や機械などの成長力が高いと思われている業種は相対的に割り負けています。業種の世界では典型的な出遅れ景気敏感株の物色が行われているようです。

【ファクターから見える世界】 倒産確率、β、PBR、60日ボラティリティーなどのリスクを表すファクターの有効性が極めて高くなっています。逆に自己資本比率や、予想ROE、税引利益率などのクォリティ-を示すファクターの有効性が低下しています。業種から見える世界と同じくファクターの世界でも、典型的な出遅れ物色が行われていることがうかがえます。

【個別銘柄から見える世界】 2月の株価上昇率上位20%の銘柄のPBR分布を見てみると、最もPBRの低い銘柄群(第1分位)が40%を占めています。有効ファクターの上位にPBRが入っていることからも当然の結果です。ただ、2番目に占有率が高いのは意外にも最もPBRが高い銘柄群(第5分位)で18%を占めています。第4分位と合わせると33%と実に3銘柄に1銘柄がPBRがどちらかと言えば高い銘柄で占められています。通常であれば、第1分位から順に占有率が下がるはずですが、今回はPBRの低いグループと、高いグループが同時に評価されているのです。

昨年の夏ごろ、新型コロナ感染拡大前の株価水準を取り戻し、「これからはValue優位だ。いやGrowthが引き続き強い。」なる神学論争が繰り広げられてきました。結果はここに示した通り、衛星写真でみればValue優位ですが、着陸してみるとGrowthもしっかり活躍しているようです。Valueは株価が上がってしまうとValueではなくなります。その時のために、Growthの選別物色が行われているのでしょう。