株式評価モデルの一つに配当割引モデル※があります。同モデルに基づくと、金利上昇により割引率が上昇する局面では、グロース株への投資を避けるべきという意見もあります。金利・割引率・株価の関係、及びそれが投資判断にどう影響するのか、野村證券投資情報部の伊藤高志シニア・ストラテジストが解説します。

※株価(P)=D(配当)/ r(割引率)-g(成長率)

日々の株価は割引率の『期待値』変化の影響が大

 配当割引モデルに基づけば、①著しい低金利環境や、②グロース株のようにr(割引率)とg(成長率)が拮抗している場合、などはわずかなr(割引率)の変化が、理論株価を大きく変動させます。現在、米国などでグロース株が不安定になっているのは、①と②が同時に起きているためと考えられます。

 なお、配当割引モデルで用いられる、D(配当)や、r(割引率)、g(成長率)はいずれも『期待値』です。市場の金利観が変化し、r(割引率)の期待値が変化した場合、本来であればg(成長率)やD(配当)の期待値も変化しているはずです。

 ただ現実には、FOMC(米連邦公開市場委員会)などに代表される経済・金融イベントなどにより、r(割引率)の期待値は瞬時に変化しますが、それに比べるとg(成長率)の期待値の変化は緩慢です。結果、日々の株価の動きは、r(割引率)の期待値の変化に大きく影響を受けてしまいますが、同時にg(成長率)の期待値も変わっているという視点を持つことは、投資の時間軸が長い投資家には重要です。

(野村證券投資情報部 伊藤 高志)

ご投資にあたっての注意点