FRB(米連邦準備理事会)による利上げとロシア・ウクライナ紛争による物価上昇に伴い、米国にインフレーション(以下、インフレ)と景気後退が同時に発生するスタグフレーションの懸念が高まっている。そこで今回は、スタグフレーションの進行度合いを測るのに役立つ“悲惨指数”について紹介したい。

 “悲惨指数”とは米国の経済学者アーサー・オークン氏が考案した国民の経済的な悲惨さ(生活困窮度)を表す指標であり、消費者物価指数(以下、CPI)の前年同月比と失業率を加算して算出される。CPI の上昇はインフレ、失業率の上昇は景気後退を表すことから、悲惨指数が高水準ならスタグフレーションが進行し、国民の生活が困窮していると考えられる。

(注)悲惨指数は消費者物価指数(季節調整前、前年同月比)+ 失業率(季節調整後)で算出した。
(出所) 野村総合研究所より野村作成

 図は過去50年間における米国の悲惨指数の推移を表したものである。米国においてスタグフレーションが顕著に現れたのは1970~80年代に二度起きたオイルショックの時だったが、悲惨指数のピークはそれぞれ19.9、22.0と、過去50年で他になく高い値を記録している。最近では2020年のコロナショックの際に15.1まで跳ね上がった。足元では12程度だが上昇傾向にある。

 スタグフレーション下での資産運用はインフレと景気後退の両リスクに対処するため、平時とは異なる工夫が必要になる。時機を得た投資判断のために悲惨指数を参考にしてみてはいかがだろうか。

(インデックス業務室 岡﨑 亮)

※野村週報 2022年6月6日号「資産運用」より

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