空飛ぶクルマの開発が、航空機メーカーに加え国内外の多くのベンチャー企業も参画して、2023~24年頃の実用化を目指して進められている。

 空飛ぶクルマのバリューチェーン(価値連鎖)として、①機体メーカーによる機体の生産・販売、②航空会社による運航サービス、③離発着場(ポート)などインフラ運営、④保険や機体リースなど金融サービス、⑤ライドシェア(相乗り)サービスなどMaaS(Mobility as a Service)連携、などが見込まれている。

 空飛ぶクルマの導入初期は、機体製造と運航サービスがビジネスの中心となり、その後、インフラ整備や各種サービスへの展開が進むと見られる。機体の開発では、機体メーカーによる量産に向けて、航空機部品メーカーや電気自動車に関連した自動車部品メーカーなどを含むサプライチェーン(供給網)の構築が見込まれている。

 航空会社は、空飛ぶクルマを活用した旅客輸送サービスを開始する予定である。日本航空は、パートナー企業と連携して25年度に空飛ぶクルマを利用した事業化を計画する。安全運航に向けて、管制システムの運用や機体整備なども重要と見られる。

 空飛ぶクルマの離発着場となるポートの設置・運営などインフラ整備は、デベロッパー(不動産開発業者)などのビジネスチャンスと見られる。都市開発やスマートシティに向けたポート導入も進むことが見込まれる。金融サービスとして、空飛ぶクルマの事故をカバーする損害保険やファイナンス、リースなども必要となろう。

 MaaS 連携では、空飛ぶクルマと他のモビリティ(鉄道、バス、タクシーなど公共交通機関を含む)を連携させたライドシェアサービスなどプラットフォームサービス(需要者と供給者を結ぶネットワークを構築するサービス)の提供が見込まれている。米国ベンチャーのArcher Aviation は、ニューヨークのマンハッタンからJFK 国際空港までの移動時間と1人当たりコストを、ウーバーの各々70分、76ドルに対し、空飛ぶクルマでは22分、50ドルと、早くて安い移動が可能と試算する。

 MaaS 連携したプラットフォームサービスを活用することで、空飛ぶクルマは従来よりも効率的なモビリティ利用を可能にすることが期待されている。

(フロンティア・リサーチ部 田崎 僚)

※野村週報 2022年6月6日号「新産業の潮流」より

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