2022年4月に再編された東京証券取引所プライム市場の上場会社は、21年6月11日に施行された「改訂コーポレートガバナンス・コード」に基づき、気候関連情報開示の質と量の充実が求められている。

 サステナビリティ課題のなかでも、気候関連のリスク及び機会に対しては、優先的に情報開示が強化される方向である。気候関連のリスクは、投資家及び金融規制当局にとって、重要度が増大している財務リスクとなっているからである。温室効果ガス排出量の削減を目的とした技術の進歩や政府の施策の急激な変化は、資産価値の再評価を引き起こし、投資先企業に財務的影響を及ぼし、金融機関のバランスシートに影響を与える可能性がある。

 国際的に採用されている気候関連情報開示の枠組みとしては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言がある。22年3月には、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、TCFD の提言を基礎とした「IFRS サステナビリティ開示基準」の公開草案を公表した。サステナビリティ報告については、複数の開示基準や枠組みが混在している実態があったが、IFRS サステナビリティ開示基準の国際基準としての位置づけが固まりつつある。比較可能で整合性の取れた開示基準策定が進展すれば、投資家の投資の意思決定に有用なサステナビリティ情報開示が促進される。

 コーポレートガバナンス・コードの改訂とIFRS サステナビリティ開示基準の策定を受けて、金融庁は金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」において、TCFD の提言又はIFRS サステナビリティ開示基準に基づいた、有価証券報告書でのサステナビリティ情報の法定開示義務について検討を進めている。これにより、広く情報開示が進むと想定される。

 プライム市場の上場会社は、企業の財務に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している気候関連のリスク及び機会について、顕在化する可能性の程度や時期、財務に与える影響の内容、及び対応策を具体的に開示することが求められる。これにより、投資家が、気候変動に対して起こり得る将来のさまざまな状況において、投資先企業の先々の経営戦略がどの程度堅牢であるかを理解できるようになることが期待されている。

(野村資本市場研究所 板津 直孝)

※野村週報 2022年6月6日号「資本市場の話題」より

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

ご投資にあたっての注意点