
6月以降、順調に値を戻していた米国株式市場は、8月25日-27日に開催されたジャクソンホール会議におけるパウエルFRB(連邦準備理事会)議長の講演(日本時間26日23時)を受けて急落に見舞われました。今後の利上げペースについてはデータ次第との従来からの柔軟な姿勢を示しながらも、インフレ抑制のタカ派スタンスを改めて強調した同議長の発言は、一部で来年の利下げの可能性も取り沙汰されるなど、先行きに楽観的な見方も出ていた株式市場に対して冷や水を浴びせる形となりました。
今後もインフレ動向を巡る金融当局と株式市場の攻防はまだまだ続きそうです。今回の株価下落は買いのチャンスとなるでしょうか︖そこで今回は日米株式市場の「アノマリー(経験則)」に注目してみました。下のグラフは、日経平均株価(1949年以降)、NYダウ(1945年以降)、ドル円レート(1971年以降)のそれぞれの月間騰落率の平均値を取ったものです。
月間騰落率平均



(注1)当該期間の月間騰落率の平均値を算出。(注2)ドル円レートの数値は日銀公表値で東京市場、取引時間中ベース。
(出所)日本経済新聞社、S&Pダウ・ジョーンズ株式会社、日本銀行データより野村證券投資情報部作成
例えば、NYダウに着目すると、1945年以降で月間で最もパフォーマンスが良いのが4月、最もパフォーマンスが悪いのが9月であることがわかります。米国では「Sell in May and go away, don‘t come back until St.Leger day.(5月に売り抜けてセントレジャー(9月)まで戻ってくるな)※」という有名な相場格言があるように、平均的に見ると、米国では例年5~9月の期間の株価パフォーマンスが悪い傾向があります。逆に言えば、「9月に買って翌年の5月に売る」と良好なパフォーマンスが得られることが多かったことがわかります。
※セントレジャー︓英国競馬の伝統的な大レースの一つで、クラシック三冠競走の最終戦として例年9月の第2土曜日に実施される。日本競馬での3歳牡馬三冠クラシックレース最終戦の菊花賞に相当
米国では、5~6月や8~9月に株価パフォーマンスが悪い理由として、前者は個人の確定申告の税還付の資金流入が一巡すること、後者は市場参加者の多くが夏季休暇を取得することによるポジション調整などの需給要因が挙げられることが多いですが、根拠のある明確な理由はありません。こうした傾向は、米国だけでなく日本でも概ね当てはまることが確認できます。最近は下落が8月に早まる傾向が観察されますが、夏場から秋口にかけての株価下落は日本株にとってもエントリーのタイミングとして有望と言えそうです。今年も「セントレジャー」が近づいてきましたね。
テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。