タカ派姿勢を示したパウエルFRB議長

 パウエルFRB議長はインフレが落ち着くまで、時期尚早な金融引き締めからの転換を行わないと表明しました。早期の金融引き締めからの転換を予想していた株式市場で、ボラティリティー(変動率)は再び上昇し、利上げによる景気減速懸念も強まっています。しかし、インフレの拡大に歯止めがかかり、金利上昇懸念が一巡すれば株式市場は復調に転じる、との我々の見方は変わりません。原油価格は既に低下しており、インフレ沈静化がより明確になれば、金融引き締めへの懸念は徐々に後退し、景気や企業業績の復調への期待が広がるとみます

利上げ継続によりインフレはいずれ落ち着く

 米欧を中心とする利上げにより、主要国の景気は減速しています。また、原油に代表される資源価格の低下やサプライチェーン(供給網)の改善から、インフレのピークアウトが示唆されます。米国経済は、野村證券の2022年終盤からの景気後退予想に対し、市場予想の中心は景気後退は回避できるとみているようです。金利上昇で住宅販売の減少は続くとみられますが、雇用は堅調で個人消費は良好です。インフレ沈静化は十分進んでいませんが、インフレ期待が高止まりしないようFRBは利上げを続けるため、インフレ率はいずれ落ち着くでしょう

米国企業の増益基調は失われず

 11月8日に米国で中間選挙が行われます。大統領と議会の支配政党が異なる結果となる場合、政策実行が滞るリスクがでてきます。米国企業業績については、決算シーズンの7月から8月に下方修正が本格化しましたが、増益基調は失われていません。S&P500指数のPER(株価収益率)は切り下がっており、株価の割高感は限定的です。

ユーロ圏経済は厳しい

 ユーロ圏は、天然ガスのロシアからの供給削減や価格高騰により、インフレや経済活動への支障が強まっています。ECBはインフレ抑制に向け利上げを続けるものの、景気悪化懸念は米国よりも強いとみられます。

中国景気減速

 中国は、10月16日に5年に1度の最高指導部の人事を決める共産党大会が開催されます。一方、重要な政治イベントを控える中で、台湾問題を巡り地域の緊張が高まり、不動産関連の建設問題や、ゼロコロナ政策による経済活動の抑制から、景気は減速しています。中国政府は財政政策や金融政策による景気支援を続け、経済や社会の安定を図るとみられます。

日本企業の業績は悪くない

 日本では資源関連の輸入金額が増え、経常収支は赤字へと転落しました。一方、国内経済については設備投資が堅調で、復調がみられます。新型コロナに対する行動制限の緩和として、訪日旅客の水際対策の緩和が実施され、国内の旅行支援なども予定されています。政府は予備費を活用した物価高対策を決定し、10月には総合経済対策を取りまとめる予定で、切れ目のない経済政策が続きます。金融政策は緩和姿勢が維持され、内外金融政策の方向性の違いや経常収支の悪化により、円安がさらに進みました。2022年度の企業業績における下方修正は限定的で、円安の効果もあり、製造業を中心に業績は上方修正されています。PBR (株価純資産倍率)やPER(株価収益率)でみて、日経平均株価に割高感はみられません。

投資戦略

 投資戦略については、米国を中心に経済やインフレ指標によって市場のボラティリティーが高まる可能性は引き続きありますが、インフレや金融引き締めはいずれ和らぎ、景気と企業業績への信頼感が回復することで、株式市場は業績相場に戻るとみます

(投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 10 月号」(発行日:2022年9月20日)「投資戦略の概要」より

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