経済成長につながるインフレともう一つのインフレ
一般的に、景気の拡大によって人々の購買意欲が高まると、需要(ディマンド)の増加により物価が上昇します。このように、需要サイドに起因する物価上昇をディマンドプル・インフレと言います。高くても欲しいという需要が増えれば、企業など生産者は価格を上げることができ、売上と利益の拡大が期待できます(上図・左側)。それにより、生産の増加や新たな設備投資など企業活動が活発化し、従業員の賃金上昇も期待されます。賃金上昇が広がれば、さらに消費が拡大するという好循環が生まれます。
一方、供給サイドである企業など生産者のコスト(原材料価格や賃金など)が上昇した場合に起こるのが、コストプッシュ・インフレです。原油価格高騰や人手不足による生産者コストの上昇分を、製品やサービスの価格に転嫁することで物価が上昇します(上図・右側)。急激にコストが上昇した場合には、価格転嫁が追いつかなかったり、値上げによる需要減退など、企業の利益を圧迫する懸念があります。
好ましいインフレとは
短期間に急激なインフレが起きると、予算に制限のある人々は生活必需品に絞って買物をしようと、生活防衛に走るため、裁量的支出の減退につながってしまいます。景気拡大には物価の上昇に見合った賃金の上昇も不可欠です。ディマンドプル型の適度に安定したインフレが経済成長にとって好ましい状態と言えます。
(野村證券投資情報部 岩崎 裕美)