Non-Fungible Token(非代替性トークン。以下、NFT)を活用することで、スポーツ産業におけるグッズ販売の幅が大きく広がる可能性がある。

 NFTはブロックチェーン技術を応用したものであり、デジタルデータの真贋証明に活用できる。海外では、スポーツ関係者によるNFT 活用事例が多く存在する。

 例えば、NBA Top Shot はNBA選手の名プレーを題材にしたデジタルなトレーディングカードで、累計売上は1.5億ドルに達している。カードには“moments”と呼ばれるハイライト映像が付されている。選手やプレーの人気度や知名度によってカードの資産性が異なる。

 リアルなカードの場合、カードがファンの間で売買された(二次流通した)としてもリーグや選手は経済的なリターンを得ることはできない。一方、NFTを活用すれば、カードが取引される都度、手数料を得る仕組みを構築できる。このような新たな資金循環は、リーグやクラブチーム、選手の収益を押し上げ得る。

 日本でも、横浜DeNA ベイスターズが2021年11月に「PLAYBACK 9」の提供を、パシフィックリーグマーケティングが21年12月にメルカリと「パ・リーグExcitingMoments β」の提供を開始した。

 22年4月からは、NFTマーケットプレイス「LINE NFT」の場を活用し、PLAYBACK9のNFT をユーザー間で取引(売買)することが可能になるなど、二次流通市場の整備も始まった。

 ただし、日米のNFTを比較すると商品設計に差がある。NBA Top Shotは、どの選手の、どういったプレー映像が入っているかは、パッケージを開封するまで分からず、ガチャ(くじ)要素のある商品設計となっている。一方、日本国内で提供されている商品では、購入時点で選手とシーンが特定されており、ガチャ要素はない。

 米国との商品設計の違いの背景には、日本では法的な論点整理が不十分なことがある。NFT パッケージのランダム型販売と二次流通市場を組み合わせた場合、日本においては賭博罪(刑法185条)が成立する可能性が指摘されている。法解釈について政府の方針が示されれば、米国のような商品設計によるNFTが日本国内でも広がる可能性があろう。

(フロンティア・リサーチ部 小川 裕一郎)

※野村週報 2022年10月10日号「新産業の潮流」より

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