インフレと政策金利にはどういった関係性があるのでしょうか。1992年に米スタンフォード大学(当時)のジョン・テイラー教授は、政策金利の変化は、インフレ率と成長率から近似できることを示しました。
A)インフレ率が高ければ、景気過熱を抑えるために金利を引き上げる。
B)成長率が低い(①)、もしくは、失業率が高い(②)場合には、景気を支えるために金利を引き下げる。
これは「テイラー・ルール」と呼ばれ、修正を加えたうえで金融政策を評価する上での一つの指標として用いられています。
2008年の金融危機以降は、図の赤線の政策金利上限は、テイラー・ルールによる金利(黒線、灰色線)よりも下の水準です。テイラー教授は、FRB(米連邦準備理事会)が、信用リスクの脆弱性などを考慮して金融政策を行ったためと分析しています。過去においては、テイラー・ルール金利よりも高い水準まで政策金利が引き上げられた後に景気後退が起こることがありました。
現在は、テイラー・ルールに則れば10%を超える水準にまで政策金利を引き上げる必要があります。しかし、市場ではその水準までの利上げは予想されていません。
(野村證券投資情報部 竹綱 宏行)