経済対策法案とバイデン大統領の支持率

 2022年8月以降、バイデン大統領の支持率が回復しています。背景には、半導体工場の建設や設立(投資への補助金)などに527億ドル(1米ドル=147円換算で約7兆7,469億円)の補助金を投じる半導体補助金法案や、EV(電気自動車)の購入に際しての税額控除などが盛り込まれたインフレ抑制法案の成立、ペロシ下院議長の台湾訪問で中国に強硬姿勢を示したことなどの成果が挙げられます。

 世論調査によると、バイデン大統領の支持率回復を受けて、中間選挙では上院は民主党が過半数を維持するとの見方であるものの可能性は低下しつつあります。一方、下院は共和党が優勢と指摘されています。

中間選挙で想定されるシナリオ

 11月8日に中間選挙(議会選挙)が行われます。上院100議席のうち35議席(任期満了34議席、補欠選挙1議席)と、下院の全議席(435議席)が改選対象になります。

 中間選挙の結果、上院もしくは下院の過半数を野党・共和党が占める「ねじれ議会」となれば、法案や予算案が野党の同意なしには成立することが困難になり、選挙後の財政など政策の実行が停滞する可能性があります。仮に上院を野党共和党に奪還されれば、閣僚や判事、FRB(米連邦準備理事会)理事などの人事承認にも野党の同意が必要になります。

米国議会情勢

 下院選挙は、今回の中間選挙から各州に割り当てられる議員数が新しい配分になっています。カリフォルニア州やイリノイ州、ミシガン州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州など民主党が優勢な州(ブルー・ステイト)への配分が減り、フロリダ州やモンタナ州、ノースカロライナ州、テキサス州など共和党が優勢な州(レッド・ステイト)への配分が増え、各州の区割りの見直しとあいまって、共和党に有利な議席配分になったと指摘されています。

上院選の情勢と接戦州

 上院の政党支持の状況を見ると、北東部や西沿岸部はリベラルな民主党、中西部や南部は保守的な共和党の支持基盤が強いと言えます。

 2024年の大統領選を占う上で、ネバダ州やジョージア州などの接戦州における選挙結果が注目されます。また、ペンシルベニア州やウィスコンシン州など北東部や中西部には、選挙のたびに勝利政党が変わりやすい「スイングステート」と呼ばれる州が多くあります。

 トランプ前大統領が支援する候補の当落が注目されるほかにも、最高裁が人工中絶権を認めた判例を破棄したことに対する批判が、民主党の支持拡大につながるかに注目されます。

大統領と議会の関係がねじれたケース

 1990年以降の中間選挙後の政治情勢で、大統領と議会との支配政党にねじれが生じたケースがありました。直近では、トランプ政権時の2018年11月の中間選挙でねじれが発生し、国境の壁や移民問題で議会と対立し、ねじれ議会前後に一部政府機関の閉鎖など政治の混乱が起きました。

 その他にも、ねじれが生じたケースを振り返ると、与野党の対立が深刻化して予算関連の法案が成立せず、政府機関の閉鎖が起きるケースがありました。また、国債の元利払いに支障をきたすことでデフォルトリスクが台頭したりするなど、金融市場が不安定になる事態も多々起きています。

今後の米国の政治・経済日程

 ねじれが生じた場合、2023年1月の連邦債務の法定上限への対処が遅れるリスクや2023年9月までに歳出法案や暫定予算が成立せず、2023年10月以降に政府閉鎖を招くリスクなどがあり、注意が必要です。仮に、上院で民主党が過半数を失う場合には、2024年1月31日に任期満了となるクックFRB理事の再任も問題になるでしょう。中間選挙の結果は、日本時間11月9日(水)中には大勢が判明するとみられ、関心が高まっています。

(投資情報部 寺田 絢子)

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