11月8日に実施された米国の中間選挙は「民主党は予想以上に健闘」とのヘッドラインニュースが多く見られます。一部には、「上下院とも共和党が制す」との予想もありましたが、上院は議席数がほぼ同数で激戦、下院は共和党が過半数を制する見込みながら予想以上に民主党が議席数を獲得との情勢です。ジョージア州の上院議員選挙は、両候補者とも得票数が過半数に至らず決選投票にもつれ込む見通しとなっており、決選投票は12月6日に実施されます。それまでは上院の勢力図が確定しないことになります。

 いずれにせよ、下院が共和党優勢という「ねじれ」状況の中で、バイデン政権は法案、特に予算など財政関連法案が通過しにくい現実に直面します。近年の中間選挙においてねじれ状態が生じたケースはオバマ政権とトランプ政権でした。この結果として、一部政府機関の閉鎖と言う混乱が生じ、経済へ少なからぬ影響を及ぼしました。バイデン政権もこうした事態に陥るリスクが高まるでしょう。一方、連邦債務上限を巡る紛糾で国債のデフォルト(債務不履行)が生じるリスクも否定できませんが、これは国家の信用そのものの問題であり、まして基軸通貨ドルの信認に関わるため、両党とも何とか回避するものと思われます。

 なお、米国には「財政調整法」という法律があります。米国上院ではフィリバスターという議事妨害行為が認められています。上院でフィリバスターを回避するためには議員の3分の2である60議席以上の賛成が必要となります(総議席100)。法案を通過させる場合に、このフィリバスターを回避し、財政関連法案のスピードアップを図る手段として財政調整法が用意されています。ただし、財政調整法は時限立法に限定されますので、恒久的な制度設計には適用されません。従って、法案通過のためには、従来にも増して、共和党左派の票の取り込みがキーポイントになりますので、バイデン大統領はじめ民主党幹部のリーダーシップが求められます。因みに、米国では議員の党議拘束はありません。

 今回の米国民の世論調査を見ると、関心事の第一位は景気であり、特に現在はインフレに対する不満が大きくなっています。選挙は改めて「景気・経済ファースト」との印象ですが、そもそも中間選挙は通信簿、中間テストとの位置付であり、現与党に厳しい結果となりがちです。そうした中でのインフレ加速ですので、バイデン政権にとってかなり高いハードルでした。

 近年の低インフレで忘れていましたが、今回の中間選挙で久々に「ミザリーインデックス」を思い出しました。米国の経済学者が考案した国民の生活度合を表す指数で、失業率と消費者物価指数の上昇率を加算します。10%を超えると生活が圧迫されることで国民の不満が高まり、20%を超えると時の政権に影響を与えると言われています。失業率は歴史的低水準になる一方で、インフレが加速しているために同指数は10%を超えています。ガソリン価格がそうであるように、国民目線の景気が本選である2024年の大統領選に向けてどう展開するか注目されます。

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