越境ECとは?
越境ECは、消費者がEC(電子商取引)を利用して海外の商品を購入することを指します。
越境ECの事業モデルには、①日本国内に越境ECの自社サイトを構築する、あるいは国内ECモールに出品・出店する事業モデル、②相手国のECモールやECサイトに出品・出店する事業モデル、③保税区に指定された域内の倉庫に予め商品を輸送しておき、受注後、保税倉庫から配送する事業モデル、などがあります。
③の事業モデルは、「越境ECによる小売輸入促進政策」を実施している中国向けの越境ECで増加しています。販売元にとっては一括輸送によるコスト削減や手続きの簡素化、消費者にとっては直送と比較し注文から届くまでの時間が大幅に短縮できるなどのメリットがあります。
(注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」より野村證券投資情報部作成
訪日客回復は越境ECにとって追い風となる一面も
日本から米中への越境EC販売額は年々増加しており、コロナ禍以降は急減したインバウンド需要の受け皿となっています。今後、日本政府による入国制限緩和を受け、訪日客数の回復が予想される中、旅行時に購入した製品を帰国後もリピート購入するといった、訪日を起点とした越境ECの利用拡大も期待されます。
越境ECと相乗効果のあるインバウンド需要の回復は、越境ECを手掛ける日本のメーカーや小売各社の業績にとって追い風となりそうです。また、2022年年初からの急速な円安進行も、相手国からみた日本製品の割安感を強めており、越境EC市場の拡大を後押しすると期待されます。
(出所)経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」より野村證券投資情報部作成
化粧品・日用品メーカーで越境ECの活用が進む
越境ECを活用している日本の代表的な業界としては、化粧品・美容関連や日用品、食品が挙げられます。これら業界各社は、中国を中心に海外のEC事業者と提携し、越境EC販売を強化しています。また、百貨店やドラッグストアなどの小売各社も、中国のECモールへの出店を加速させています。
ご参考: 越境EC関連銘柄の一例
越境EC活用企業
・カルビー(2229)
インバウンドで得たブランド価値を活用し、「フルグラ」「Jagabee」などを越境ECを活用して中華圏で展開している。
・マツキヨココカラ&カンパニー(3088)
中国企業の越境ECモールへ出店している。海外SNSを活用し、越境EC事業の拡大を図る。
・三越伊勢丹HD(3099)
中国企業の越境ECモールへ出店し、インバウンドで得た中国人顧客との関係性強化を図る。
・花王(4452)
中国企業の越境ECモールへ出店し、紙おむつや化粧品などを販売している。
・資生堂(4911)
中国で自社サイトを運営するほか、中国企業の越境ECモールへ出店している。
・ファンケル(4921)
米中企業の越境ECモールへ出店し、化粧品や健康食品などを販売している。
・コーセー(4922)
中国企業の越境ECモールへ出店し、販売を強化している。
・小林製薬(4967)
インバウンドで需要のあった製品を越境ECを活用し、販売拡大や育成を図る。
・カシオ計算機(6952)
時計事業の主力である「G-SHOCK」などを、中国を中心に越境ECを活用して展開している。
ECモール運営・支援
・トランス・コスモス(9715)
越境ECサイトの構築、運用や当社EC販売チャネルを活用した商品販売までをワンストップで提供している。
・JDドット・コム ADR(A6511/JD US)
中国EC大手でECサイト「JD.com」を運営する。越境ECモール「JD Worldwide」も手掛けている。
・アリババ・グループ・HD ADR(A6581/BABA US)
中国最大のEC事業者で、「天猫(Tモール)」などECサイトを運営している。越境ECモール「天猫国際」も手掛けている。
(注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。(注3)HDはホールディングスの略。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成