ラクス(3923) 情報・通信

中小企業にクラウドサービスを提供

 当社はインターネットを経由したソフトウェアの使用形態であるクラウドサービスを提供する。主力は経費精算を行う楽楽精算である。複雑な機能を省き使いやすさを重視することで主に従業員数50~1,000名程度の中小企業におけるシェアが高い。他にもPDF形式の請求書作成を補助し、請求書の発行業務を効率化する楽楽明細など、複数のクラウドサービスを提供する。

 既存事業が生み出した利益を新規事業に積極的に再投資している。新規事業を大きく成長させるには広告宣伝や営業人員の強化が必要であり、両分野に投資することで新規事業の新規契約獲得が加速し、高い売上成長を実現できると野村ではみている。

高い売上成長と利益の創出に期待

 2023.3期は成長に向けた積極投資を行っており営業減益となろうが、売上高は前期比31%増と高成長を野村では見込む。

 当社は中期経営計画において21.3期末を起点とする26.3期までの年平均売上成長率の目標を26~30%と掲げており、野村ではこれを達成可能と考える。楽楽精算や楽楽明細は普及率が低い一方で需要は強いため、高ペースでの売上成長が見込める。24.3期以降は増収ペースが投資を上回ることで増益基調となろう。

 長期では既存事業は普及が進むのに伴い売上成長の鈍化が見込まれる。これまでの事業活動にみられるように、今後の新規事業の育成に期待したい。

(エクイティ・リサーチ部 平岡 直樹)

キーエンス(6861) 電気機器

直販、ファブレスのセンサ最大手

 FA(Factory Automation、工場自動化)用センサなどで国内最大手、世界有数の制御機器メーカー。1972年に現取締役名誉会長の滝崎武光氏が当社の前身となるリード電機を創立。現社名は「Key of Science(科学の鍵)」を握りたいという夢が込められている。直販体制で基本的にファブレス(自社工場を持たない)経営。

 2022年7~9月期の営業利益は前年同期比33%増の1,387億円と、中国ロックダウン(都市封鎖)があった前四半期の同1,028億円から回復し、野村予想の1,310億円をやや上回った。23.3期の年間配当予想も従来の200円から300円へと引き上げられており、第一印象はややポジティブ。

ダウンサイクル下でも成長力に注目

 工作機械の受注サイクルは22年4月にピークを打ち、現在はダウンサイクル下にあり、底打ちまでには1年半程度を要すると野村では見ており、当社の需要環境も悪化が見込まれる。ただし当社は顧客に対して付加価値を与えるアプリケーションの提案とそれを支える営業力と商品力が強みであり、自動化に対する潜在需要を、当社自らが顧客提案により顕在化させることで景気循環の影響などを吸収して長期にわたる利益成長を実現できるだろう。

 22年10月に発表した値上げや直販、業績動向を反映した賞与などでのコスト管理によって、24.3期も前期比4%営業増益と利益成長は継続しよう。

(エクイティ・リサーチ部 前川 健太郎)

オリエントコーポレーション(8585) その他金融

信販業からの脱却を目指す

 2023.3期から3カ年の新中期経営計画が開始している。前中計ではみずほフィナンシャルグループが保有していた優先株を償還し、デジタル化による費用の効率化や新ビジネスの創出に取り組んだ。新中計ではトランスフォーメーションを切り口に事業変革を目指している。当社は個品割賦事業が祖業の信販会社であるが、新中計では家賃保証や売掛金保証などを行う決済・保証事業や海外を重点領域と位置付け、事業構成を変える考えである。また、前中計で取り組んだデジタル化を一層進め、生産性と顧客利便性を高める。そのためにデジタル人材を3,000人育成し、先進テック企業を目指すとしている。

逆風が吹く中での船出

 新中計が開始して半年となるが、事業環境は好不調が分かれている。好調なのは決済・保証、海外、カード・融資事業である。カード・融資事業はコロナ禍が続いているが国内の消費は回復基調にある中で、カード取扱高の増加が見られる。決済・保証では家賃保証の取扱高の増加や、原油価格の高騰も追い風となり売掛金保証の取扱いが増加した。一方で、半導体不足の影響から自動車等の生産が遅れており、個品割賦事業では苦戦が見られる。加えて、世界的に政策金利が上昇する中、会社は国内金利も上昇する可能性を考慮し個品割賦事業の残高拡大に保守的に取り組んでおり、慎重な事業運営が継続しよう。

(エクイティ・リサーチ部 坂巻 成彦)

※野村週報 2022年11月28日号「銘柄研究」より

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