共産党の最高指導部人事が決定
中国では、先般、5年に一度の共産党大会(中国共産党全国代表大会)が開催されました。
その後、共産党大会で選出された中央委員による一中全会(党中央委員会第1回全体会議)を開催し、最高指導部を構成する政治局常務委員(7名)を決定しました。党トップの総書記には、習近平氏が再任されました。選出された政治局常務委員をみると、習総書記の側近が多く就任しており、政権基盤がより強化されています。
習近平総書記の再任により、異例の3期目の政権運営が始まりましたが、この先、政府部門の閣僚や幹部候補なども決定される予定で、中国の指導部人事は、大きな節目を迎えています。
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中国経済政策の方向性に注目
今後の政治日程では、12月に中央経済工作会議が開催される予定です。中央経済工作会議は、中国共産党が翌年のマクロ経済運営の方針について討議し、決定する重要な会議です。
中国では、これまでゼロコロナ政策により、わずかな感染者の増加に対しても厳格な行動制限が適用されてきました。都市部や工場地帯での度重なるロックダウン(都市封鎖)の影響から、経済活動が停滞しています。特に、政府が不動産バブル抑制に向けて慎重姿勢に転じたことに加え、大手不動産企業の経営不振に陥ったことなどから、不動産開発投資額は大幅に減少しています。
中国共産党は、2023年の景気浮揚を目指すとみられます。公的資金による不良債権の買い取りといった抜本的な不動産市場への対策や、ゼロコロナ政策の見直しなどが盛り込まれるか、注目されます。
なお、ゼロコロナ政策については、厳格な行動制限が批判を浴びたため、2022年11月11日に先行して一部緩和が行われました。今回の発表は微調整にとどまっており、本格的な制限緩和が待たれます。
実務を担う経済閣僚人事
経済政策の方向性という点では、実務を担う政府部門の人事が金融市場でも注目を集めるとみられます。
国家主席を含む政府の人事は、2023年2月に開催予定の第20期二中全会(中央委員会第2回全体会議)で候補が決定され、2023年3月上旬に召集予定の第14期全人代(全国人民代表大会)第1回全体会議で正式承認されるとみられます。
習近平総書記が3期目の国家主席となるのは順当ですが、市場の焦点は首相人事です。
中国では、江沢民政権時代の朱鎔基首相、胡錦涛政権時代の温家宝首相のように、首相職は経済政策を指揮するポストとされていました。
もっとも、習近平政権時代になってからは、経済政策の司令塔が、李克強首相とも、劉鶴副首相ともいわれており、指揮系統が不明確である点は否めません。次期首相が経済政策を指導する立場に戻るのか、また、中央政治局常務委員の序列2位(習近平総書記に次ぐポスト)の李強・上海市党委員会書記が、副首相を経験せずに首相に選出されるのか、注目されます。
全人代で首相が経済成長目標を発表
中国の憲法では、全人代は、国家機構の最高機関と定められており、日本の国会に相当します。
例年、大会初日には、日本の施政方針演説にあたる政府活動報告を首相が行います。その際、中央経済工作会議で検討された2023年の経済成長目標が発表されるとみられます。
台湾問題への取り組みにも注目
3期目の習近平政権では、台湾問題の基本方針も注目されます。
2022年8月の米国ペロシ下院議長の台湾訪問に対し、中国が台湾周辺で大規模軍事演習を行うなど、強い抗議を示しました。
米国との交戦や経済制裁といったリスクを踏まえると、中国が台湾への軍事進攻を行う可能性は高くはないとみられます。しかし、台湾では、2024年1月に総統選挙が実施されるため、選挙を前に両国間の緊張が高まりやすく、その動向には留意が必要です。
(投資情報部 澤田 麻希)