ブロックチェーン技術で可視化し、売買可能な形式に変換した環境価値を、製品の付加価値にしたり、資金提供者への返礼品にしたりする企業が増えよう。

 2022年8月に、電力の需給管理サービスを提供するエナリスと酒造メーカーの大和川酒造店が実施した実証実験が注目される。両社は、ブロックチェーン技術を用いて、再生可能エネルギーで製造した日本酒であることを保証する仕組みを開発した。製造工程での再生可能エネルギーの使用実績データをブロックチェーンに記録したうえで、そのデータと1対1で対応したNFT(非代替トークン)を発行し、販売する日本酒に添付したのである。

 使用実績データは、再生可能エネルギーの発電量や電力使用量などで構成される。ブロックチェーンにデータを記録することで、その真正性を担保するとともに可視化した。更に、NFTに対応させることで、唯一無二の環境価値として売買可能にした。

 環境価値が対応したNFTを製品に添付して販売することで、企業は差異化を図れよう。カーボンフットプリントは、製品の原材料調達から廃棄までの全工程で排出された温室効果ガスの総量を示すものの、消費者は製造に使われた電源や電力使用量などを把握できない。一方、NFTには再生可能エネルギーの使用実績データが対応しているため、消費者はブロックチェーンの記録を辿ることで、いつ、どこで、どのような電源の再生可能エネルギーが、どのくらい使用されたのかを把握できる。

 NFTを保有し続けていれば、消費者は製品を使用し終わった後でも脱炭素への貢献を主張できる。脱炭素への貢献をアピールする目的で、NFTが添付された製品を選好する意識が広がる可能性があろう。

 環境価値が対応したNFTを資金提供者への返礼品にすることで、事業活動に共感する提供者から資金を調達することも期待できよう。エナリスと大和川酒造店は、一部のNFTをマーケットプレイスで販売し、環境分野へ投資するための資金を調達した。NFTの発行目的や対応する環境価値を開示することで、資金提供者から共感を得られた模様である。

 環境価値の可視化や売買可能な形式への変換に取り組む企業が増えよう。企業の訴求方法にも注目したい。

(フロンティア・リサーチ部 長谷川 哲也)

※野村週報 2022年12月5日号「新産業の潮流」より

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