東レ(3402) 繊維製品

衣料用繊維や炭素繊維が主力

 大手SPA(製造小売業)向けなどの衣料用繊維やおむつ用スパンボンド、B787向けなどでの炭素繊維複合材(世界トップシェア)が主力。リチウムイオン電池用セパレータや電子材料、水処理膜なども有力。

 2023.3期7~9月期の機能化成品はアジア経済の減速などで、ABS樹脂や光学フィルムの販売が不振であった。一方、炭素繊維や環境・エンジニアリング、繊維は航空機や一貫型繊維製品の需要回復、水処理膜の売上増加の持続などにより25.3期にかけても事業利益の拡大が続くと見ている。24.3期は在庫調整の進展で機能化成品の販売が下げ止まると見られ、全社の事業利益は前期比で増加する確度が高いだろう。

B787の受注増が業績にプラス

 BoeingではB787の受注が22年8月5機、9月16機、10月10機と着実に増えている。同社は11月2日の投資家向け説明会でB787を23年に年間70~80機の納入、25~26年には月10機の生産台数まで拡大させる予定とした。12月13日には米航空大手UnitedAirlines がB787を最大200機発注したと発表しており、当社の炭素繊維は25.3期以降も好調が続く可能性がある。

 また、機能化成品に含まれるリチウムイオン電池用のセパレータの販売数量は売上構成比の高い車載用を中心に回復基調にある。減損による固定費減の効果もあり、23.3期下期以降も同製品の事業損益は改善しよう。

(エクイティ・リサーチ部 岡嵜 茂樹)

日立製作所(6501) 電気機器

事業再編が進み業績安定度が向上

 過去4回の中期経営計画を経て事業再編が大幅に進んだ。22社あった上場子会社はゼロとなり、デジタル・グリーン・産業等の注力分野に経営資源を集中している。

 当社は事業範囲が広く規模も大きいため地政学や景気変動リスクの影響は不可避である。しかし、事業再編により価格変動の大きい事業は減り、様々なリスクの極小化にも努め、業績安定度は格段に向上した。

 2023.3期業績は半導体不足で自動車機器事業の下振れが想定されるが、デジタルやグリーン分野の受注好調で概ね相殺できよう。24.3期は半導体製造装置や産業分野が減益見込みだが、半導体不足の解消やパワーグリッドの需要増が増益に貢献しよう。

成長を重視した2024中期経営計画

 2024中期経営計画では売上成長年率5~7%を目標に掲げる。成長牽引役はビジネスプラットフォームのLumadaで、関連売上高は22.3期の1.4兆円から23.3期は1.9兆円、25.3期は2.7兆円に拡大しよう。データ駆動で顧客との価値協創サイクルを回し、Lumada サービス事業比率を25.3期までに46%から50%超に引き上げ、高収益体質を確立する方針。

 同時にイノベーション強化を進めており、3カ年累計の研究開発費は1.1兆円を計画、前回中期経営計画比で26%増加させる。エネルギー転換や電動化等に傾斜配分しグリーン価値を創出することで、成長局面入りできると見られる。

(エクイティ・リサーチ部 山崎 雅也)

トヨタ自動車(7203) 輸送用機器

24.3期は半導体不足が解消し大幅増益に

 半導体など部品の供給不足により、会社は2023.3期の世界生産台数(トヨタ、レクサスブランド、中国合弁を含む)を前期比7%増の920万台に留まると予想している。北米や日本、中近東で当社製品への需要は非常に旺盛で、仮に供給問題がなければ1,000万台を超える世界生産が可能だったとみられる。野村では、サプライチェーン問題が概ね解消する24.3期の世界生産は23.3期比で約100万台増加すると予想する。23.3期は、レクサスやハイブリッド車など、半導体の使用量が多い高付加価値な製品ほど生産制約が大きい。24.3期は製品ミックスの改善も期待できることから、大幅な営業増益を予想する。

HVとEVの両方に注力する戦略

 世界の自動車メーカーの中には、ハイブリッド車(HV)用を含めエンジンへの投資を大幅に削減する企業も多いが、当社は、販売台数で世界首位の規模を生かし、HVと電気自動車(EV)の両方に積極的に投資している。今後20年間の自動車需要は増加の多くが人口増の著しいインド亜大陸やアフリカの新興国と考えられる。これらの地域では発電時のCO2(二酸化炭素)排出量が多い石炭火力など火力発電が主流で、EVが普及してもCO2削減に繋がりづらい。地球環境の観点からも、HV に積極投資する戦略は妥当性が高いといえる。リスクは極端な円高。1円の円高は通期で450億円の営業減益要因と試算される。

(エクイティ・リサーチ部 桾本 将隆)

※野村週報2023年1月16日号「銘柄研究」より

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