日本:2022年10-12月期決算プレビュー

10-12月期決算発表シーズン始まる

 1月下旬より2022年10-12月期決算の発表が本格化します。現時点で、ラッセル野村Large Cap(除く金融) 構成企業の、市場予想増収率は前年同期比+14.9%、経常増益率は同+0.0%となっています。

(注)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の四半期・増収率(前年同期比)および経常増益率(前年同期比)の推移。2022年10-12月期は、2022年12月26日時点で、QUICK市場コンセンサス予想が存在している企業のみを集計している。グラフ中の数値ラベルは、ラッセル野村Large Cap(除く金融)のもの。ラッセル野村Large Cap(除く金融)および、非製造業(除く金融)の2022年1-3月期以降はソフトバンクグループを集計から除外している。ラッセル野村Large Cap(除く金融)の2021年1-3月期の経常増益率(前年同期比)は+290%、2021年4-6月期は同+182%だった。グラフ中のRN Large Capはラッセル野村Large Capの略。
(出所)野村證券投資情報部作成

 2020年10-12月期以降のいわゆるコロナ禍からのV字型回復の過程では、売上高の伸び(あるいは水準)に比べて、比較的高い経常増益率が維持されてきました。これが2022年度に入り、インフレ圧力が世界的に強まると、増収率が極めて高い水準にあるにもかかわらず、経常増益率は低下傾向をたどっています。

 (よほどの外部環境の悪化がない限り、)洋の東西を問わず、実際の利益は事前コンセンサスを上回る傾向が顕著です。今回も事前予想を上回る増益率になるとみられますが、企業が投入価格の上昇分を価格転嫁することに苦心する状況は続きそうです。

ガラリと業績けん引のメンバーが替わる

 半期ベースで見た場合、今2022年度は、上期と下期で業績のけん引役が大きく入れ替わることが予想されています。

 まず、これまでエネルギー価格の上昇を追い風に全体業績をけん引してきた素材(及び商社)セクターの業績は失速し、減益寄与に転落することが見込まれます。

(注)ラッセル野村Large Capを構成する業種グループの、2022年度上期~下期の経常増減益寄与率。上期は実績値。下期は2023年1月6日時点の野村證券市場戦略リサーチ部による予想。素材は化学、鉄鋼・非鉄。加工は機械、自動車、電機・精密。消費・流通(除く商社)は医薬品、食品、家庭用品、サービス、小売り。情報は、ソフトウェア、メディア、通信。公益・インフラは、建設、住宅・不動産、運輸、公益。
(出所)野村證券投資情報部作成

 これに替わって躍進が見込まれるのが加工産業です。加工産業の多くでは遅れに遅れていた挽回生産がいよいよ本格化してきていることから増益寄与率が上昇するとみられます。

 また、上期に保有する資産価格の下落などで業績が傷ついた、情報や金融(銀行)では増減益寄与率が好転/改善する見通しです。

 なお、コロナ禍の経済活動正常化や、インバウンド需要の恩恵などが期待される、消費・流通(除く商社)では、今のところ全体業績に大きな影響を及ぼすような増益寄与率の上昇をアナリストは見込んでいません。

円高反転の業績予想への影響は?

 一時、150円/米ドルを突破した米ドル円マーケットですが、足元では130円/米ドル台前半で推移しており、輸出企業を中心に業績への影響が懸念されています。

 企業側の為替前提の分布は、年度初の2022年6月々初時点では120円/米ドルが中央値でした。しかし、その後の円安進行を受けて、2022年度7-9月期決算発表の時期(2022年10~11月ごろ)に過半の企業が(発表時の実際の米ドル円レートよりは円高水準である)135~140円/米ドルへと前提を変更しています。

(注)東証プライム市場上場企業の、2022年度通期の米ドル円レート前提の分布状況。濃いグレーは6月々初時点の分布、赤色は現時点(2022年12月々初時点)に公表されている前提の分布を示している。
(出所)野村證券投資情報部作成

 日本企業全体では1円/米ドルの円高が『1年続くと』利益が0.4%弱減少するといわれています。今回の場合は想定よりも円高で推移する期間は6ヶ月以下となるので、現状の130円/米ドル前後の水準が続いても通期業績見通しへの影響は軽微と見てよいでしょう。

円安の余韻と挽回生産

 我が国の企業業績は、輸出型製造業の構成比が高いことから、鉱工業生産と為替との連動性が高いという特徴があります。

 下図にある通り、2022年度下期は、①前年同期比で円安米ドル高の影響が残り、②生産が挽回生産の本格化にともない急速に改善する、ことから企業業績は堅調に推移すると見られます。なお、米ドル円レートは足元で円高方向に反転していますが、前年同期比でみれば、現状(131.50円/米ドル前後)でも20円/米ドル程度の円安となるため、企業業績に致命的なダメージにはならないと考えられます。

(注)鉱工業生産は2022年7-9月期までが実績値、以降は野村證券経済調査部による予想値。為替(米ドル円レート)は、2022年10-12月期までが実績値、以降は野村證券市場戦略リサーチ部による前提値。RI(リビジョン・インデックス)の直近値は2022年12月1日時点。
(出所)野村證券投資情報部作成

 ただ、現時点の予想では、円安ドル高や挽回生産の効果は2023年度に入ると急速に縮小することが予想されます。業績予想の見方も、現時点で不透明な、金融引き締めフェーズの後の先進国や、ゼロコロナ政策撤回後の中国での、景気動向に対して神経質な反応を示すことになる可能性が高いでしょう。

(投資情報部 伊藤 高志)

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