中国では「ゼロコロナ」政策を大幅緩和し、2023年1月8日に入国者に対する水際対策などが緩和されました。中国では例年、旧正月の休暇に国内外への旅行者が急増します。2023年の旧正月の休暇は1月21日から27日までですが、同期間の訪日旅行者数は、新型コロナの感染状況や防疫措置に依存すると考えられます。

中国では、感染対策が緩和される中、新型コロナの感染が急速に拡大しています。他方、日本政府は、中国本土からの入国者の水際措置を1月8日から強化したため、訪日中国人旅行者の増加の本格的な回復は、2023年春以降になると予想されます。

訪日外国人旅行者数は、2019年7月には月間約300万人に達しましたが、その内、中国からの旅行者の比率は35%以上を占めていました。政府が2020年に新型コロナに関する水際対策を強化したことに伴い、訪日外国人旅行者が激減しましたが、2022年9月に入国制限を緩和したことを受けて増加傾向にあります。特に、韓国、台湾、米国からの旅行者が回復しているのに対し、中国や香港からの旅行者の戻りは鈍く、2022年12月は約137万人と全盛期の5割弱に留まります。

コロナ禍前の2019年の傾向をみると、訪日外国人が一人当たり日本で旅行に使うお金は平均15万9千円で、買物代、宿泊費、飲食費の順に支出しています。中国などアジアからの訪日客は買物、欧米は宿泊や飲食に多く支出しています。それぞれ小売業や宿泊業、外食業などのサービス業、食料品や化粧品などに関連する製造業への波及効果が見込まれます。経済産業省は、訪日外国人旅行消費の生産波及効果を約7.8兆円、 二次的な効果を含めればGDPの0.9%に相当する、と試算しています。 

また、訪日観光をきっかけに越境電子商取引により日本製品を購入するケースが増加しており、訪日観光後の副次的な効果も期待されます。インバウンド需要の回復が待たれます。

(野村證券投資情報部 坪川 一浩)

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