台湾有事とは、中国が台湾の再統⼀のために軍事侵攻をすることや、中台間で戦闘になることを言います。中国は、「⼀つの中国」原則を国家的使命とし、 「台湾は中国の⼀部」としています。平和的統⼀を志向しながらも軍事的統⼀の可能性を否定していません。他方、米国政府は「一つの中国」を認識することを表明しながらも、承認はしておらず、平和的解決でない限り、中国による台湾併合は認めない、という立場を維持しています。

台湾海峡を巡っては、1950年代から1990年代にかけて中国大陸と台湾の間で4度にわたり緊張が高まりましたが、米国の介入などもあり、全面的な戦争に発展することはありませんでした。第三次台湾海峡危機では、台湾初の直接選挙となった1996年の台湾総統選挙を前に中国がミサイル発射実験を行い、台湾の独立を志向する李登輝総統に投票することは戦争を意味するというメッセージを送ろうとしたと見られています。1996年3月に米国が空母を派遣するなどし、収束に向かいました。

第三次台湾海峡危機の間、日米の株価は概ね上昇基調を維持しました。日本株については、円安が進んだことが株価の上昇を後押しした一因と考えられます。一方、台湾加権指数は、同期間中は軟調に推移しましたが、緊張緩和に伴い持ち直しました。

2022年8月には、ペロシ米下院議長が訪台したことを受けて、中国は台湾周辺で大規模な演習を行い、複数の弾道ミサイルを発射しました。米中の軍事衝突の可能性を警戒し、株式相場は一時軟調推移となりました。2024年1月には台湾総統選挙が予定されており、台湾の独立機運が高まった場合には、中台関係の緊張が高まる可能性があるため、注意が必要です。

台湾有事の際は、日本のシーレーンが使えなくなり、食料やエネルギーなどの輸入が滞る可能性があります。また、半導体などのサプライチェーンの混乱により、経済活動を円滑に行うことが困難になると見られ、相場への影響が懸念されます。

(野村證券投資情報部 坪川 一浩)

ご投資にあたっての注意点